第11話 班ノート

 自由行動でどうするかを決めてから3日後。

 今日は私に班ノートが回ってくる番だ。

 1時間目の授業が終わったところで隣の男子に声を掛けられる。

 名前は確か……佐藤くんだっけ。まあそれこそ班ノート見たらわかるよね。


「えっと、上山さん。これ、班ノート」


 そう言って私に班ノートを渡してくれる。


「ありがとねー」


 気になるから見てしまおう。

 もちろん、いちごちゃんのページを。

 ぺらぺら。


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名前:早苗 いちご

誕生日:7月10日

部活:女子ソフトテニス部

趣味・特技:小さい子のお世話をすること

好きな食べ物:いちごのショートケーキ

みんなへ:みなさん初めまして、いちごです。今度の宿泊行事はこの班で行動するということで、みんなと仲良くなれたらいいなと思っています。よろしくお願いします!


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 7月ってことはかに座! 今度星占い見る時に気にしてみよっと……。

 他は……小さい子のお世話をすることが得意ってのは知らなかった。確かにいちごちゃん頼れる感じで、大人な感じもありながら優しさに溢れてて……私もお世話されたいなぁ。なんて。


 でも得意ってことは実際にそういうことしてたんだろうけども、そんな話は聞いたことなかったかも。ちょっと聞いてみようかな。


 私は席を立っていちごちゃんの下へ向かう。

 いちごちゃんはノートを見ていて、すごい勉強熱心だなーと感心しちゃう。

 確かにさっきの数学の授業、ちょっとややこしかったもんね。私も後で復習しないと。

 机を挟んでいちごちゃんの反対側に立ってから声を掛ける。


「ねえねえ」

「どうしたの?」


これが葡萄だったら声を掛けるんじゃなくて手を掴むんだろうなぁ。私もそんなことしてみたいけど、できるわけがない。そんなことしちゃったら、また顔が赤くなってお喋りすらできなくなっちゃうから。


「えっと、班ノート見たんだけど、いちごちゃんって小さい子のお世話するのが好きなんだねー。今まで知らなくてさ」

「うん、そうだよ~。そういえば言ってなかったね。小学校の時なんかはずっとそういうことしてたの」


 へー。小学校の時かー。そういや、いちごちゃんとは違う小学校だから、いちごちゃんの小学校時代についてはよく知らないんだった。

 葡萄とは一緒だったからなんでも知ってるけど。


「そうなんだ! 例えばどんなことー?」

「そうだね~。いちごが小学4年生の時に高学年と低学年の交流ってことで一緒に遊んだりしたんだけど、その時に3人の子と仲良くなってね」

「うんうん」


 あー、うちの小学校にもそんなことあったっけ。

 確かに私も仲良くしてて小さい子がかわいいなーって思ったような気がする。でも私には葡萄という手のかかる子が既にいたからなぁ。


「それで、その子たちとはその出来事があった後も一緒に遊ぶようになってね。いつの間にか同じクラスの子と遊ぶよりも、その子たちと遊ぶ方が楽しくなっちゃって。なんだか守ってあげたくなるんだよね」


 守ってあげたくなる。なんか最近同じようなことを思ったことがある気がする……。なんだったけなぁ。


「なんかわかる気がするかも」

「ほんと~!? あんまりこの感覚わかってくれる人いなかったから、嬉しい~」


 そうやって笑顔を見せてくれるいちごちゃん。

 あ、やばい。こんな笑顔で私を見つめられたら、やっぱりお世話されたくなっちゃう。ちょっと胸のあたりがざわざわしちゃう。


「えー、あー、うん。よかったー」


 ちょっと混乱してうまく返事ができなかった。

 顔とかも変になってないかな? おかしく思われなかったかな?

 でもいちごちゃんは笑顔なままだから、きっと大丈夫だろう。よかった。


「でもね、結局卒業するまで一緒に遊んだのは2人で、1人はちょっと色々あって……」


 キーン、コーン、カーン、コーン。


 ここでチャイムですか。まだお話の途中なんですけども。


「チャイム鳴っちゃったね。また後でね~」

「うん」


 でも今の話の続きは暗い話だろうから、次の休み時間に聞くのもちょっと良くないよね。なんか悲しそうな顔をしてた気がするし。


 あ、先生来た。国語の準備しないと。

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