第36話

「社長すみません…」


怯えながら帰ってきた。社長室に直行。


「藤原さん、退勤時間過ぎないでもらえますか?」


厳し…


「スカウト…できませんでした」


「柴田さんという子は?見つかったんですか?」


「いいえ」


「聞き込みしたらどうですか?」


「え、そ、そんな。怪しくないですか?」


「十分怪しいですよね」


ひど。


「そんなんじゃいつまで経ってもアシスタントの指導できません。早目に見つけてください」


「お言葉ですが!方法がわかりません。怪しく思われて私一人では難しいです。誰か…女性の方と…」


前社長の方をちらと見る。


「藤原さん。あなたは何のために戻ってきたんですか?スカウトするためですよね?それで方法がわからない?困ります。これじゃ今までスカウトもしたことない人と同じですよ」


「そ、そう言われても…」


「声を出して下さい。元気よく。自信なさそうにしないで下さい。暗い事務所だと思われますよ」


「ですが…1人では…」


「2人ならスカウトできると?根拠は?」


「…」


「ないなら余計なこと考えないで、集中して下さい」


「…はい」


「嫌ですか?ならやらなくていいです。他の人にやってもらいます」


「いえ…やります。やらせて下さい」


「では、退勤して下さい。お疲れ様でした」


冷徹な目だ…なんておぞましい。沖縄にいる足助さんはそんな顔してないのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る