第26話

「会社に置いている荷物などありますか?」


「いえ…」


「では、今日で退職ということですね。書類用意して」


「はい」


前社長がなにか書類を用意している。

紙を目の前に置かれて、すこし不安になる。退職願。私はモデルしか今までしてない。なにができるって言うの?


「サインをお願いします」


前社長はいつものようにきつめだ。


「下津さん、手が止まってますよ?」


社長を目の前にして、書類が書けなくなってしまった。


「私…やっぱり…」


「下津さん。梅田さんを奄美で待ってあげないんですか?」


「え?」


「あなたの友人ですよね」


それって?


「梅田がどこにいるかわかるんですか?」


「サインしたら教えてあげますよ」


「はい…」


慌ててサインして、近くの席にいた前社長が回収した。


「これは、モデル事務所関係者には教えないでください」


「わかりました…」


「刑務所にいます」


「え!そ、そんな」


「会いたかったら、行ってください。住所は紙に書いて差し上げましょうか?」


「お願いします!」


「梅田さんはあなたに会いたいと思いますか?」


「…え」

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