第3話

「転勤になった」

「てんき?」

「ううん、遠くにお引っ越しすることよ。だからおばちゃんとは、ばいばいね。」

父と母は菓子折を持っておばちゃんの家に挨拶に来た。

引っ越しの荷造りの間も私はおばちゃんの家に居た。

「ピーコちゃん、触るかい?」

「…。」

引越しがよくわからなかった私は、まだまだハッピーちゃんに触る機会はあるだろうと思って首を振ったが、おばちゃんが執拗に触らせようとするので、恐る恐る人差し指を伸ばした。

スーッと指で背中をなぞる。

「ハッピーちゃんのはね、やわらかいねえ」

「ピーコちゃん、ピーコちゃんお利口さんね」

おばちゃんの膝に座り、噛み合っていない会話を交わす。丸まった背中のおばちゃんはピーコちゃんを褒めながら、私の頭を撫でている。

「オリコウ、オリコウ」

静かな部屋にピーコちゃんの饒舌が鳴り響く。

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