第2話
家は転勤族。父は夜勤のある仕事で、母は専業主婦。
父も母も休日は眠っているかパチンコに明け暮れていた。父の勤務日、母は「仕事だ」と言って、私をおばちゃんに預けた。家族にとって初めて越してきたこの土地でおばちゃんは唯一の親戚だった。
「ママ、まだかなあ」
「そうだねえ」
おばちゃんは母の『仕事』のことを知っていたのかはわからない。
「アイス食べるかい?」
おばちゃんの冷蔵庫にはいつも銀紙に包まれた棒アイスが入っていた。当時は銀紙を綺麗に剥がせるかどうかに一生懸命だった。大人となった今では簡単なことだが、今はもう、そのアイスは廃盤となり挑戦することが出来ない。
私の一日は、ハッピーちゃんを眺め、アイスの銀紙と戦い、後は居間の絨毯のペルシャ模様を隅から隅まで指で辿っているうちにうたた寝をすることの繰り返しであった。
聞こえる音と言えば、ハッピーちゃんのさえずり、カチカチと規則正しくリズムを刻む鳩時計ぐらいだ。
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