ピーコちゃんとおばちゃん
iori
第1話
耳鳴りがする。
朝目覚めた瞬間から、夜眠りに落ちるまで頭の中で鳴り響くキーンという金属音。
三歳の頃の私は、よく『おばちゃん』の家に預けられていた。おばちゃんは祖母の姉――おおおばである。
「おはよう」
「オハヨウ」
「こんにちわ」
「コンニチハ」
おばちゃんは『ハッピーちゃん』というセキセイインコを飼っていて、幼児の話し相手にはうってつけの存在だった。
また、早くに夫を亡くしたおばちゃんにとっては唯一の家族であった。
「ピーコちゃん、ごはんだよ」
おばちゃんは『ハッピーちゃん』のことを『ピーコちゃん』と呼ぶ。
「おばちゃん、『ハッピーちゃん』だよ」
三十年以上経った今では、どちらが本当の名前だったのかわからない。
水色の頭にぶち模様の黄色い羽をした『ハッピーちゃん』はピンク色の鳥籠に住んでいる。時折、丸々としたおばちゃんの肩へと勢いよく羽ばたき、頬にちょこんとキスをする姿が愛らしい。
私は触ってみたい気持ちと尖ったくちばしで突かれたらどうしようという気持ちで、その様子を眺めていた。
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