第17話 二人の少女の選択
「申し訳ごさいません優奈様今日も少々用事がありまして。」
学校終わりの教室でエリナが申し訳なさそうに謝った。
ここ2日程エリナは用事あると言って一緒に帰っていない。どんな用事か聞いても「優奈様がお気にするようなことではありませんよ」とはぐらかされ少々不服だった。
「わかった。でも早く終わらせてよ?」
「ご安心ください。面倒な用事も今日で終わりますから……」
エリナは笑みを浮かべながらそう告げると、どこかに向かっていった。
「ねぇ、最近変な視線感じなくなったわよね?」
エリナの姿が見えなくなったことを確認すると、玲奈が確かめる様に聞いてきた。
「確かに……あの女の子達最近見かけないね」
玲奈の言う通りここ最近視線はさっぱり感じなくなった。
前に見た二人の少女も最近は全く見かけない。すでにいつもの日常に戻っていた。
「ところでエリナって何者?」
玲奈はこれが本題であるかのように切り出した。
「エリナは私の幼馴染みたいなもので小さい頃からずっと私を支えてくれててすごくいい子だよ」
「ふーん……なるほどねまぁそういうことにしておくわ」
何かを確信した様に微笑むと、いつもの様な雰囲気に戻った。
天慶学院のとある一室。そこに必死になってパソコンを操作する二人の少女がいた。
「どう、 そっちは、終わった?」
「あともうちょい……よし終わった。」
「よし! いくわよ」
彼女達がここにきたのは主に命じられ、慶陰会の情報を盗むことだった。慶陰会のコンピューターには学院に所属するすべての生徒の情報がまとめられている。
「ちょっと何してるの?」
「ちょい待って、このメモリどうやって抜くの?」
「早くして! じゃないとーー」
「おやおや、いけない子達だなぁ」
「「!?」」
声がした方向に振り向くと、一人の少女が立っていた。綺麗な黒髪に麻色の瞳を持つ美しい少女。彼女こそが慶陰会会長一条澪なのだ。
「か、会長!」
「どうしてここに……」
「どうしてってここ、慶陰会の特別室だよ? 居て当然じゃないか。それより君達は一体何をしていたのかな? 君が手に持っているそれは慶陰会の大事な大事な情報だよね?」
「え、えっとこれは……」
「いいよいいよ、誤魔化さなくて。それより取引をしようか」
「取引ですか?」
警戒の目を向けながら聴くと澪は表情を変えず淡々と言った。
「そう、君達がなんの理由もなくこの私一条澪を裏切るとは思えない。いるんだろ? 君達を裏切らせた人物が。」
2人の目に動揺が走った。
「はは、どうやらあたりみたいだね。 その人物がだれか話してくれるなら君達の裏切りは無かったことにしよう。どうだい? 悪くない提案だろう?」
確かに澪の提案は悪くないむしろすごくいい話だ。だがそうなると銀髪の少女を裏切ることになる。銀髪の少女はすでに彼女達の中で澪を超える恐ろしさになっていた。
「「私たちはあのお方を裏切ることはできません!」」
「ほう……この私より、そのお方とやらを取るか……せっかく人が機会をあげたっていうのに。」
はぁとため息をつくと、今まで優しかった目が鋭く殺意のこもった目に変わった。
「この一条澪が率いる慶陰会を裏切ったこと、死ぬまで公開させてあげる」
「あら、よく言えたわね貴方達。」
その時美しい声が聞こえた。
「誰だ!」
澪が殺意のこもった目で振り返るとそこには銀髪に水色の瞳をした少女、七瀬エリナが立っていた。
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