第16話 暗躍一族の分家


「ねぇ、全然弱みとかなさそうじゃない?」


「確かに裏表なさそうだねぇ」


 道の陰から2人の令嬢の様子を見ていた、ロングヘアーとショートヘアーの少女はけだるけそうに呟いた。


 彼女達に命じられたのは、鳳条グループ令嬢 鳳条優菜と如月グループ令嬢 如月玲奈の監視だ。何か弱みなどがないか先程から事細かく見ていたがそんなものは一切見受けられないでいた。


「どする?」


「このままつけていても不審者扱いされかねないし、そろそろ帰ろっか」


 そう思い振り向くと、そこに美しい銀髪と透き通る様な水色の瞳をした少女が立っていた。


「あらあら、優菜様の後をつけて何をしているの?」


「あ、あなたは鳳条優菜の付き人、さっき学校に戻ったんじゃ……」


「ふふ、そんなの嘘に決まっているじゃない用があるのはあなた達よ。」


「用って何?」


 ロングヘアーの少女が問うと、銀髪の少女は少し真剣な表情になって答えた。


「あなた達は慶陰会に所属する生徒たちね?」


「「ッ!?」」


 突然の指摘に2人の少女は激しく動揺した。


 慶陰会は学院のごく一部しか存在を知らない。その存在を知っているということは只者ではないということだ。


「やはり、また変なのが動いているのね……あなた達には私の手伝いをしてもらうわ。そのためにまず慶陰会を抜けてもらう」


「それは……できない」


「なぜ?」


「だって抜けたら、何されるかわからないから……」


 この少女の味方をするということはつまり、慶陰を的に回すということ。慶陰会はあらゆる所にコネがあるため下手をすると退学の可能性もある。彼女達はそれが怖かった。


 彼女達がどちらにするか決めかねていると、銀髪の少女が先程より、少々冷たい表情で恐ろしいことを言ってきた。


「だったら私の方が慶陰会なんかよりも恐ろしいことを教えればいいのですか?」


「な、何を言ってーー」


「鈴木鏡花……仲澤心貴方達を退学させたり、親の会社を倒産させることなんて私はいつでもできるのよ……」


「そんなことできるわけないでしょ!」


「信じないならそれでいいのよ? 貴方達の人生がどうなっても知らないけど。」


 二人は悟った。目の前に立っている少女が言っていることがはったりではなく、本気で言っているということに。


 そして2人はお互いに見つめ合い決心すると、少女の前に跪いた。


「「慶陰会を抜け貴方様の、お手伝いをいたします。」」


 エリナは満足そうに二人を見下ろすと不適な笑みを浮かべた。


「ふふ、いい子達ね。じゃあ私の指示に従って早速動いてもらうわ。」


 その後、エリナは少女達に指示の内容を話した。







「何? 二人を見張っていた、子達がいきなり会を辞めたいと言ってきたのかい?」


 威風のある少女は眉をひそめ、報告係を睨みつけた。報告係の少女は震えながら答えた。


「はい……理由を聞いても答えなくて」


「ふーん……それで? まさかこのまま野放しにしようとか思ってないよね?」


「い、いえ! 決してそんなことはーー」


「まぁいいや、その二人は私が直接出向いてわからせてくるよ。慶陰会を裏切ったこと後悔させてあげるよ。」


「ですが、直接出向くなど危険です、何か罠やもしれません!」


「君、私の家がどんな家柄か知ってるよね?」


「はい……一条家、日本を陰から支配した一族の末裔です。」

 

「そう、まぁうちは分家だし本家には敵わないけどね」


 一条家はとある暗躍一族の分家、分家だがその力は凄まじく、一条家はあらゆる力を持っている。ちなみに本家はどの文献にも記載されてなく、本家直流の人間はもういないと言われている。


「さぁ一条家長女、一条 澪《いちじょう みお》出るとしよう」


 澪はゆっくりと椅子から立ち上がった。

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