第3話
その時、カサッ。と玄関のほうから音が鳴った。行ってみると、何かの封筒が投函されていた。封を破り中を見ると、健康診断のお知らせ、という文字が見えたので、こないだ受けたものの結果かと思って紙を開く。そういえば今まではこういうのも全部彼女が管理してたんだっけなと思いながら内容を見ると、いたるところに要精密検査、と書かれていた。今まではいたって健康!と彼女にも褒められていたから、今回が初めての異常値となる。
「なんでこういう時に限ってくるかなぁ…。」
と頭を搔き、ほんの少し生まれた罪悪感と一緒に缶ビールを一気に飲み干した。
後日再検査をし、医師のもとへ向かうと、
「んー…。ちょっと言いずらいんですけどね。」と医師は言う。
少し背中がこわばるのを感じながらも、まだ若いからなんかあっても何とかなる、と心の中で自分を鼓舞していると、医師は自分にこういった。
「あと二か月ってところですかねえ…。」
「え?」
「あなたの余命があと二か月。」
一瞬、この世界から音が消え色が消えたように感じた。
医師は悲しむ様子も、ためらう様子も見せず、ただ、淡々と言葉をかけてきた。言葉が言葉としての意味を理解できなくなった自分にもうそれはただの雑音でしかなかった。
その後のことは、もうあまり覚えていない。たいした治療法もないという話と、むしろここまで耐えていたのが奇跡だとか、今後の益になるような話を一切しない医師の話を途中で抜け出し病院から飛び出して、今、家にいる。
人生で最悪な時というのは本当にふとやってくるんだなあと、改めて思った。
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