第2話

今日僕は妻と離婚した。

仕事から帰ったある日、別れの手紙と印が押された離婚届、それから五年前に彼女に渡した婚約指輪が家の机の上に置かれていた。すぐに彼女に電話をかけたが、つながらず。何も言わないで離婚するのはおかしいだろうと彼女の両親の家を訪ねたところ、もう関わらないでくれと言っていました、と困ったような顔で言われ、離婚届も出しておいてくださいと、玄関先で話を終わらせられた。

その離婚届を正式に区役所に出したのがついさっきのこと。今は、だいぶん広くなったこの部屋で晩酌をしようとしていたところだ。

「なんでかなぁ…。」

とため息が出る。

付き合うまでに一年、結婚までに二年かかった彼女のことをこの世の誰よりも愛していた。勤めている会社が小さく、給料も少なかったが、

「私は君と過ごす時間があれば少しだけあれば十分だよ。」

と、彼女はいつも笑顔で言ってくれた。仕事が忙しくてなかなか気を使えない時期もあったが結婚して五年、それもだんだんなくなり、新婚から夫婦へと変わっていっているんだなと実感もあった。

それなのに。それなのに彼女はいなくなった。

…違和感が無いわけではなかった。

彼女は仕事をしていないが、たまに友達と出かけるといって、自分が家に帰ってもいないことがあった。最近は仲のいい友達ができたのかその頻度が多くなることはあったが、僕は彼女を信頼していたからわざわざ詮索することなんてなかった。

「はぁ…。」

もう考えることを放棄して、コンビニで買った缶ビールに手を伸ばす。

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