犯罪者

 あれから三日経った。警察の目はあの変幻仮面つまり水木源蔵の犯行だと見て捜査している。しかし途中から万事休すになり、そのあとは夢我夢中になったがそれにはちゃんと理由がある。

 水木源蔵の家は同じく岡山市にあったのだが空襲とともに塵地化になってしまったため現在市内を幽霊のように徘徊して、支援を受けながら生活している。のを水木源蔵の友人と名乗る人から聞いた。

 だから警察は賢明にあり一匹逃さないように岡山市内を警察そうでで探しているが、この時にはまんまと逃げられたのか姿形を消していた。それが警察を地団駄させた、それで犯罪者をしかも殺人犯をそのまま野放しにするはいかない警察の正義が酸素となりガソリンとなり燃え始め、今では岡山県付近の警察署に電話を掛けて合同捜査になった。

 その頃の山根は雨粒に当たるビルの中で頭をバリバリと搔き回して頭の中をほじくり回しながら、あーだこーだ、いや、もしかして、そうではない、じゃあ。など独り言を思いながら言いながら。ひたすら考えているが中々結果が出ない。

 しかし一つ言えるのは犯人が古谷家の者であるということが分かりったということだ。警察が死体について検査をした結果、やはり黒薔薇の先端には針と毒が仕込まれていて死因は毒殺に違いない。その黒薔薇はただの赤薔薇に絵の具で塗っただけで、その薔薇は庭に多く咲き乱れているのでこれは証拠には程遠い。分かったのはそれだけではなくベルトから微量ながらも夜光塗料が発見されたのだ。つまり犯人は古谷家の中にいるのが自然な流れながらも分かり豊作だと思いきや、その犯人個人が誰なのか困惑している。なぜ短刀とかそんなのではなく黒薔薇に毒針などの小細工をしたのか。

 ベルトに夜光塗料を付けれるのは古谷家全員ができる。

 忘れられないのはあの濱家五郎の悔しそうな表情だった。目的の物を手に入れたのになぜなのか。古谷孔明を殺害してしまったことなのだろうか。いや、そうじゃない。古谷孔明は停電しても動くはずがない、暗闇は一瞬で方向感覚をなくす。無闇に歩くのを人はやめるのを知っている、しかもあの鉄格子に自身を持っているのであれば、もっと歩いていないと決めれる。

 ではなぜ殺されなければならなかったのか。

 するとコンコン、ドアノックに反応してソファに寝そべっていた山根はバッと身をひるがえし

「どうぞ、お入りください。」

 ドアノブが独りでに回って入ってきたのは

「あっ山根さん早朝からすみません。」

 朝霧警部はニコニコと頭の後ろを搔きながら机の目の前にある椅子に座った

「どうしたのですか。」

「いや、もう一度話を整理しようと思って」

 実を言うと彼とは中学時代の同級生で、しかもお互い探偵小説が好きでよくトリックや登場人物の関係など時には独自の小説まで書いて読み合い、訂正し合う仲であり。一度朝霧耕平が濡れ衣を着せられそうな立場に落とされたのだが山根蒼がそれを救い上げたのである。

「あの晩は九時から一分間停電になって、それが解除されると古谷氏が何者かに襲われており、ニ回の窓から濱家五郎が逃げ出した。でしたよね。」

「ええ、そうです。」

 朝霧警部は重そうな表情で

「山根さんはこの事件をどう考えていますか?」

 山根は唇を引っ込めて

「僕が一番気になるのはあの濱家五郎の悔しそうな表情です。絵はなくなったつまり変幻仮面の盗みは成功したのだと我々は思っていますが、それだと説明ができないのです。何かハプニングがあったのではないかと思うのです。」

 犬のように部屋を考え周って、

「犯人が予告してそれを実行する際は、目的以外は計画に練らないのです。濱家五郎と古谷氏の立ち位置からして、絵画まで行くのに絶対に接触しないのです。」

「なんらかの怨恨じゃないんですか。」

「そうなんですかな。」

 山根は頭をバリバリと掻き乱しながら下唇を強く噛んだ。

「そうそう、水木源蔵の捜索はどうなっていますか。」

 大きく深いため息をつく、八の字の口髭を少し触ると

「それなんですがなかなか見つからないんです。岡山県全体や他県にも協力要請で探しているのですが一向に・・・・」

 不安な心を打ち消すように苦笑いをするが、本当は悔しくて悔しくて、相手は警察の目を何日もかいくぐり、今だに逮捕できずになおかつ誰の目も触れられていず、奴は日の当たらないところで警察をあざ笑っていると思うと・・・・

「警部はどう考えていますか。」

「私は濱家五郎が何らかの方法で殺人と窃盗したと思ってます。」

「それだと水木源蔵はなぜ古谷家に近づいたのでしょうか。それに絵がどうやって消失したか・・・・あまりにも難しいです。」

 まもなくして警部は頭をゴチャゴチャさせながらビルを去った。山根は疑問点を解釈しながら推理していくが、どうしても納得がいかない。

 そんな中黒電話が鳴ったので聞いてみれば相手は非常に慌てているらしく息が荒い。

「もしもし、どちらさ」

「山根さん大変です。白夜さんが変化仮面に連れ去られました。」

 朝霧警部の、それを聞いてさぞかし驚いたのも無理はない。また古谷家が襲われたのだから、殺人と窃盗もした奴が次に、か弱い少女を誘拐したのだから。ごく最近夕刊見るたびに宝石王と少女誘拐のことが書かれるのはいうまでもない。

「白夜さんの友達によると学校帰りに急に車が近くまで来て、ドアが開いたと思えばあっという間に連れ去ったらしいんです。」

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変幻仮面 鷹島隆夫 @yuureiyashiki

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