第12話

 駆逐艦を沈めた。

 後は、強襲揚陸艦そしてアパッチ。

 沈みゆく駆逐艦の上で睨んだ。

 アパッチの銃口は霊式をとらえる。

「行くょ」

 付喪神に語りかけた。

「はい」

 もう一度可変して大空へとまいあがる。

 夜の闇の中、真紅の機体が目標になる。

 機銃掃射が機体に穴を開ける。

 もう引き返せない。

 コクピットのガラスが割れる。

「ウォォォォ」

「カ・ミ・カ・ゼ」

 付喪神がコダマする。

 可変して機関銃をつかんだ。

 勢いで両機体がまとまって艦橋に激突する。

 アパッチが腕を振る。

「グワァ」

 霊式が吹き飛ばされる。

 距離が開く。

 エンジンの出力はアパッチが上である。

「死ね、|吸血鬼《ヴァンパイヤ』」

 スピーカーでわめく。

 不死者ノスフェラトゥの侮蔑語、かつて飲み過ぎた人間が死ぬ事なくウイルス感染してそれが広まった種族。

 精神力で吸血衝動を抑える個体もあるが、吸血して殺す個体まある。

 ソフィア正教会が悪魔認定した。

 アパッチが霊式を蹴る。

 海に落ちたら動けなくなる。

 いや、それはお互いにか、

 なんとか海に引きづりおろせば、

 最低相打ちにはもちこめる。

「楽には殺さんぞ」

 左腕を振り回される。

 横Gがかかる。

 腕がちぎれる。

「中破、もう飛行はできません」

 付喪神が報告してくる。

「アイツを海に沈めたい、何か手がないか」

「力のない力士が足を持って土俵に追い込む技がありますが」

「それしかないか」

 左足にとびついた。

「無駄な、アガキを」

 背中をつかんでひきはがされる。

 海に落下しないように制御するのが精いっぱい。

「今、コクピットから引きづり出してやる」

 左手で頭を握って引きづりあげられると、右手でコクピットを握り潰してくる。

「このまま握りつぶしてもお前らは簡単には死なないだろう」

 その時、船体が大きくかたむいた。

 モアが反重力プレートで横に落下してきた。

 衝撃で船が転覆した。

 これが最後のチャンス。

 計器もレバーもハンドルも吹き飛んだ。

「付喪神、最後のお願い。アイツを海に」

 返事はない。

 傾く甲板の上で霊式が体当たりした。

 お互いに沈む。

「やったー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る