第10話

カーン


 金属音が鳴った。

「何の音」

「探信音だ。

 新大陸軍め、潜水艦を引っ張り出してきやがった」

 モアも立ち上がる。

「船長」

「どうしました」

 ブラハム船長が振り向いた。

「船を浮上させて、魚雷が来る」

「飛行石を起動させろ」

 部下のスケルトンに命令を下した。

「周囲を確認しろ」

 スケルトン達がロープに登って、船縁にかけ、望遠鏡を覗きこむ。

「レーダー探知機とか積んで無いの」

「原理は理解しているが材料が無かった。

 どのみち海中じゃ意味がない。

 無線機は積んだが、それは精一杯。

 下からくるぞ」

 モアが答えた。

「取舵いっぱい」

 船長が叫ぶ。

 船が傾くと魚雷が下から上へと上がっていく。

「姫、棺桶の中に逃げて下さい」

「大丈夫、まだ夜ょ」

 腕時計を見た。

「お姫様、浮上します」

 ゴーストシップは舟先から空中に産まれる。

 大きな飛沫をあげて。

「モア様」

「モア様」

 娘達2人が駆けつけてきた。

「艦長、船影3」

 モアが双眼鏡を受け取った。

「小娘1人にどういう経済観念してるんだ」

 娘達も双眼鏡を覗きこむ。

「巡洋艦の敵討ちです」

「復讐戦とは意外と古風な」

 駆逐艦2、強襲揚陸艦1、潜水艦1。

 私も大物だな。

 世界中で戦争している新大陸軍が用意できる最大戦力。

 そんなに私が憎いか。

 もはや石油利権は手に入れだろうに。

 船団が行く手を阻むように航路をとる。

 T字作戦。

「艦長、併走して」

 船は左へと舵を切る。

「防御魔法を展開して」

 悪霊イービルスピリッツ達が呪文スペルを唱える。

 敵の砲台が火を吹く。

 射程は向こうが長いのだ。

 魔法ももっと近づかなくてはいけない。

 水柱が近距離であがる。

 もう濡れて無い箇所はない。

「姫様、中へ」

 艦長が叫ぶ。

 不死者ノスフェラトゥは泳げないのだ。

「ここでいい、最後まで戦う」

「左舷、魚雷確認」

 スケルトンから声があがる。

「艦長、浮いて」

「飛行石、再点火」

 ブラハム船長が命令を下すと船がバウンドする。

 激しく揺れて皆ロープにすがりつく。

 かろうじて浮いた船下を魚雷が通過する。

 船足は向こうが早い。

 風の精霊を使っても、もう逃げられはしない。

 詰んだか。

 強襲揚陸艦の上で何かが動く。

 巨神兵。

 誰もが知っている。

 対魔法防御を持ち。

 彼らはそれを超える攻撃力で前線を奪い合っていた。

 対魔法攻撃力。

 真紅のカラーリングをされた。

 ソレが立ち上がる。

 沈黙が支配する。

 水柱の音だけが響く。

 どの国の予算も巨神兵にかけられた。

「アパッチ」

 新大陸軍の機体。

 一応文化的背景がある。

 新大陸軍はトーテムシャーマンの憑依型。

 自分の感覚を拡張させて運転する。

 バレンシアは自動人形オートマタを拡張した物。

 ユーロは複座型。

 義手義足から発展して、魔力供給の乾電池として妖精アルフ亜人種デミヒューマンを後に乗せている。

 半妖精ハーフアルフを生産する、工場まであった。

 後半戦は使いすて、その事実を隠すため粛正した。

 日本はカカシや傀儡を発展させた付喪神型。

 機械と会話しながら操縦する。

 経済力の弱い共産圏では戦車タンクが主力。

 アパッチが砲身の長い銃を構えた。

 激しい電撃をまとった。

超電磁砲レールガン

 発射される。

 鉄杭が激しく風をまとい防御魔法を突破する。

 鉄杭が船体を貫通した。

 ある者はひっくり返り、ある者はしがみつく。

 海に落ちたスケルトンやマミーもいる。

「姫様、無事ですか?」

 ブラハム船長室叫んだ。

 後部デッキに駆け出した。

「モア、霊零式改を使う」

超電磁砲レールガンなんて、あの戦争で3本しかない。

 そんな物渡されてるなんて、

 あいつはエースパイロットだ」

「分かっている。

 でも、もう、これしかない」

 コクピットに乗り込む。

「起動して、付喪神」

「こんばんは、マールズ姫。

 状況は理解しています。

 相手がアパッチなら不足はありません。

 英霊達の復讐戦です」

 日本では使い込まれた物に霊がやどる」

 話が早い。

 エンジンに火を入れた。

 反重力機器を加速。

「飛行モード起動、発信」

 せりあがってくる。

 超電磁砲レールガンが再装填される前に決める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る