第8話
新大陸とユーロ・バレンシアの狭間にある大洋を一隻の石炭蒸気船が側面の大きな両輪を回して航海していた。
赤十字が掲げられた。
勇者サクラが提唱した。
人種、民族、種族を差別しない。
国境なき医師団。
医学を納めた多くの白魔法使いが所属している。
エルネスト・ブリターニュは艦長室で書類にサインしていた。
金髪碧眼の長身で軍服を着ている。
横に軍服の女性が控えている。
階級は下である。
「坊ちゃん、こちらもお願いします」
カトリーヌ・リスは書類を受け取った。
亜麻色の髪にクルリとした茶色の瞳をしている。
「これで終わりか」
「はい、紅茶でも淹れますね」
書類を置いて紅茶の段取りを始めた。
タッタッタッタッタ。
廊下を駆けてくる音がする。
扉を開けながらノックする。
「艦長、本国から命令書が届きました」
西ユーロ、バレンシアと新大陸に統治された傀儡政権。
人々は戦場の復興に忙しく世界中の植民地再侵略まで手が回らない。
ホーリーシップ。
200年前、海賊船、幽霊船、飛空船が覇権を争う中、
魔法防御をほどこした最終的な勝利者。
それも今は昔。
巨神戦争中は病院船と運用され1度も戦場に出ることなく、
一発の銃弾を撃つことなく終わった。
植民地に散らばったユーロ敗残兵の引揚船。
今も暗黒大陸から兵を輸送している。
「直ちに、最寄りの港に行き、帰還兵を下ろし、武器弾薬を積んでジブラルタル海峡に向かい新大陸軍の指揮下に入れとのことです」
「何で?」
ハッ了解しました。
とかデズに疑問が先にでた。
戦争中人手が足らない時でさえ、お呼びがかからなかった。
戦力外の船。
「パルシャ帝国の生き残りがゴーストシップを起動させて、
多国籍軍は突破され、巡洋艦は大破したとの事です」
「ゴーストシップまだいたんだ」
お茶をドボドボこぼした。
船は赤十字の旗を下ろし、今は亡きユーロ海軍の旗を掲げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます