第5話
甲板に上がるとモアがいた。
ユーロを中心に活動していた技術者モアが亜人弾圧が始まったユーロを後にした。
新大陸の中でも人種差別が酷くて、同じ人類の中でも、白人、黒人、黄色人種、青色人種、赤色人種など区別があった。
外人と呼ばれても、八紘一宇を掲げた日本が1番マシだったらしい。
ゴーストシップの後部デッキにはモアによって組み立てられた霊零式改が反重力プレートの上に鎮座している。
「お姫様、もういいの?」
ラムネサイダーを片手にモアが聞いてきた。
「えぇ、大祖父様が日本人の様に特攻されているのをみると胸が切なくて」
「死ぬまで戦うのは日本人特有の事ではないょ、特殊な宗教やイデオロギーがない限りどの民族でも起こることだ。
確かによく考えず空気に毒されて熱狂している人が多かったけど、どの民族も右から左まで色々な意見があったょ。
それを警察が捕まえていたのはどの国もいっしょだ」
「でも、日本の場合は君主と民衆の分断がおきなくて、120代続く女系相続の日巫女の存続が決まっているでしょう」
「君のお爺さんと一緒で天孫降臨の神話が始まりだ。ありぁ、信仰だからなぁ、ソフィア正教が広まらなかった国では権利意識も薄い。
戦勝国による戦時裁判は始まったばかり、彼等の国内事情によっては日巫女様もどうなるか分からない」
「えっ、そうなの?」
「今、そういう時代なんだ。
悲しいけど力こそ正義なんだ。
ただ理想を言えば、どんなにか細くても、弾圧されても声はあげるべきだがね」
「原爆4発落とされたモンね」
「アレは人種差別だょ、イエローによる人体実験ダョ、「プルトニウム型」「ウラン型」「気化型」「魔導型」の4種類をキチンと使い分けてる」
「ウチみたいに石油もないのに新大陸はなぜ攻めて来たの」
「「進化論」と「黄禍論」の浸透。
あの国は挑戦者を許さない」
「お互い経済力がないもんね」
「経済力、工業力、資源だけではない。
コンピュータで暗号が全部解読されていた。
作戦指導者があまりに現場を知らなかった。
兵器の設計思想が思い込みのみで新大陸のように統計学に基づがなかった」
「統計学?」
「新大陸は帰還した兵器の破損箇所を数えた」
「強化したの?」
「イヤ、逆だ。
帰って来たのだから強化せずに、被弾してない部分を強化した。
兵は赤紙一枚と言って、ベテランや工人を大切にしなかった。
エンジンの出力不足でコクピット周りの防護壁をとっぱらった。これが後半戦に響いてくる。
幻の決戦を夢見て、戦力の逐次投入を行った。
部品の規格化してなくて、ニコイチできなかった。
シンガポールを落とした時、電探の技術を入手した。
ここにあるyagiとは何だと聞いて、日本人技術者だと答えられた」
悔しそうな顔をしている。
勝ちたかったんだろう。
「霊零式改も積んだんだ」
「俺もコイツも新大陸に渡したくないんだ。
イヤがらせだが完徹したい」
「モア、パイロットじゃないんでしょう」
「そりゃ、技術者だから訓練してないし、もう人手不足で翻訳や暗号解読や科学情報分析にも駆り出されていた」
「私がコイツで守ってあげる」
「姫様剣法でエースパイロット相手にどこまでやれるかな」
「ああ馬鹿にしている。
筋がいいて褒められているのに」
民族衣装を着た幼い男子が4人、女子が4人デッキに上がってくる。
1000年かけて選抜飼育された生贄の一族。
忠誠心はmax。
血液の成分が
現代文明を維持するのに人口は最低10億人いる(飛行機を運用するのに500万人いるという形で最低必要人数を産業毎に積み上げた数)
遺伝病を封じながら人口を増やすには男4人、女4人いればいい。
若者や大人は他の一族が連れて行った。
残されたのは8人の子供達だけだった。
更に幼い赤ん坊達は秘密理に敵となった人間社会にばらまいた。
運があれば育つだろう。
執事と船長とモアの娘達が上がってくる。
カエデがモアの左手をカウマがモアの右手を取った。
「お姫様出発しましょうか」
船長が声を掛けてきた。
「でわ、発進」
号令をかけた。
ゴーストシップが空へと浮き上がる。
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