第13話 予選第2試合-1
1試合目の直後、30分も経たないうちに2試合目のためにコート脇に集まる。
「皆、2試合目だ。1試合目はいい感じに相手の攻撃を受け止めることが出来たが、俺たちの一番の強みは攻撃力だ。さっきの試合はあまり攻撃に転じることが出来ず、小競り合いで時間を消費してしまった。次の試合も相手がそれに付き合ってくれるとは限らない。できる限り攻め続けて、チャンスが有れば自分が決めるように意識して行こう。」
染谷先輩が全体に向かって試合前の活を入れる。確かにさっきの試合でシュートを撃ったのは俺と風上先輩だけだった。だが、本来は俺らのチームはフォワードが4人に加えてCMFの2人を足した6人がオフェンスに携わる超攻撃的なチームだ。当然シュートを撃つ練習を積んできているし、どこからでも点が取れるような意識改革を進めてきた。
両WGとCFWの郡山先輩は次こそシュートを撃って点を取ると意気込んでいる
俺もたった二発じゃじゃまだまだ足りない。俺の哲学が正しいと周りに知らしめるためにも、自分が周囲からあれこれ言われない絶対的な選手となるためにも。
2試合目は
「風上先輩、樫木高校ってよく知ってます?」
「いや、去年も一昨年も当たったことはないし、試合も見てないな。だが結構背が高いやつが多いな。クロスからの攻めでは苦労するかもしれない。」
先輩もよく知らないらしい。確かに背が高いな。キーパー含めて180未満のやつが一人もいないんじゃないか?
「八田ヶ谷高校だったか、よろしくな。俺は樫木のキャプテン
「こちらこそよろしく。八田ヶ谷のキャプテン染谷だ。」
コイントスのために集まったところでキャプテン同士が挨拶をしている。割と長髪の背が高いスラッとしたやつだ。筋肉質には見えないからスピードタイプか?俺よりは背が低いが、ほぼほぼ並ぶくらいだ。でかいな。
ホイッスルの音がなり試合が始まる。先行は八田ヶ谷。いつも通りボールが俺のところに降りてくるが、一戦目のことを聞いたのか、相手のフォワードが詰めてくる。結構足が速く、シュートコースがほぼ塞がれた。これは直線で撃つのは無理だな。
前線を見ると俺の方を見ながら一直線に前へと走る右WG五十峯が見えた。しょうがない。うまく取れよ!
いつものシュートフォームからゴールの方向ではなく、右コーナーフラッグ付近めがけてライナー性のボールを放つ。普通なら誰もおらずシュートミスかと思われるが、五十峯は足が速い。それに初動から向かっているから相手もマークについていけていない。
ボールが少し高かったのか、五十峯はジャンプして胸トラップで納める。敵ディフェンダーがやっと追いつき一対一。
俺はここからどう動くべきか。ボールが再度に流れたため中央から右サイドに人が寄っている。相手は背が高いのでヘディング勝負ではおれは勝てない。ヘディング下手くそだしな。
なら、ここはファーサイドだな。
もう一人のCMFにアイコンタクトと手振りで位置を交換してもらい、左サイド気味の中央付近、ペナルティアークらへんへ走る。
五十峯の方を見ると、一旦上がってきたSB染谷先輩にボールを落とし、そこに風上先輩が寄ることでパスを回して突破を試みているようだ。
少し遠いが五十峯の方を見るとあいつも俺のことを見ていた。まさかとは思うがあいつ試合中ずっと俺の位置を補足しているのか?ありがたいが少し怖いな。
アイコンタクトでボールを要求する。来たボール次第でシュートが撃てる。いや、どんなボールでもいいからよこせ。
相手SBが焦って染谷先輩に詰めてきたところで五十峯が再び前に走る。スルーパスが通る。トラップかと思いきや五十峯は右足でダイレクトにファーサイドにボールを上げてきた。良いクロスだ。
敵のCBや味方CFをも素通りするパスの弾道。だが落下点には俺が届く。
少し前に飛んでくるボールに合わせ、ステップを調整する。少し高いか。いや、 跳ねれば届く!
左足で地面を強く蹴り上げ、ジャンプする。当然右足は上がってきたボールを迎え入れるべくシュート態勢。すでに足の振りは始まっている。
胸の位置くらいの高さで足がボールに当たる。ボールの勢いも相まって完璧なジャンピングボレーが相手ゴールに突き刺さる。相手キーパーは全く反応出来なかったようだ。
ドサッと地面に叩きつけられる。受け身は取ったがジャンピングボレーは痛いな。あまりやるべきではないだろう。
「よっしゃー!ナイスシュート!お前空も飛べるのかよすげえな!てか峰ナイスクロス!」
「あざす。いや本当に、よく俺を見てたな。」
「サイドにボールくれたときから上がってくると思ってたからね。少しずれたけど届いてよかったよ。ほら、相手背が高いから精一杯の力でクロス上げたんだよね。ダイレクトじゃなかったら勢い足りなかったかも。」
本人曰くファーにいる俺にボールを届けるにはかなり力がいると考えたようで、スルーパスを直接クロスとして上げられるようにいつもより少し早く走り出し、体をゴールの方に向けておいたらしい。このクロス精度なら俺じゃなくても十分ゴールに繋がるだろうし、良い攻撃手段になるな。
相手チームのボールでスタート。相手も一旦中盤に落としてから組み立ててくるようだ。さて、どう攻撃を仕掛けてくるかな。
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