131 王都周辺に入っての激変
セーフガルドでの三日間の休憩と補給の後、使節団は再び王都アレリアを目指して動き出した。そして最初レイナ姫に呼ばれて王都アレリアへ行く際に寄った村に辿り着いたところで、空気が一変した。
「サトゥルヌス様の命令で食糧その他売るわけにはいかん!
共和国ライエスタの使節団だかなんだか知らんが国へ帰れ!」
村人たちが補給はおろか、休憩することも許してはくれない。
こんな劇的な変化があるだろうか?
仕方なく付近の川近くで野営することになった。
「補給は十分ではないが、しかしセーフガルドで余分に補給しておいたので、王都アレリアまではなんとか保つだろう。だがここまで歓迎されないとはな……」
共和国使節団のライラさんが肩を落とす。
「どうやらリードリヒさんは私達を王都アレリアまで通さない腹積もりのようですね……」
私が言うと、アルベールさんが怯えるように自身の片方の肩を抱いた。
「私も暗殺される可能性が否めません。コムギー家の参謀にはいざという時の指示を出していたようですからな……。相手方には超級暗殺者が付いているという、あと四日間の旅程ですが油断は禁物ですな……」
「はい。私は起きている間数分おきに鑑定を展開することにします。少々疲れますが仕方がありません……。他に鑑定A以上持ちに私が寝ている間の索敵をお願いしたいです」
私が鑑定の常時に近い展開を宣言し、寝ている間を鑑定A持ちに頼む。
するとラフバインさんとファルゲンさんが「分かりました」「おう」と応じてくれ、ネルさんも「了解です!」と返事をくれた。
しかし……鑑定A持ちはこの三人しかいないのだろうか?
私は疑問に思って聞いてみた。
「その、他に鑑定A持ちの方は……?」
私の疑問にアルベールさんが答える。
「セーヌさん。鑑定Aでも相当珍しいんですよ。各地の冒険者ギルドマスターや超級を越える錬金術師、特級以上の魔法使いなどが保有しているとは聞きますが、我が陣営には他に鑑定A持ちはあと2、3人くらいしかいないでしょう」
「そんな……まさかそんなに珍しいスキルだったとは……」
私の周りにホウコさんやネルさんといった鑑定A持ちがいるのでどうやら世の感覚とずれがあったらしい。しかしそうならば、鑑定Sなど持っている人は世界中探しても片手で数えられるほどの数になってしまったりしないだろうか? 私は上級冒険者ギルド受付スキルに付随して付いてきただけの鑑定Sに有り難さを感じると同時に恐怖を覚える。
「ふん、セーヌの嬢ちゃんはなにか世間との認識の違いが大きそうだな! どうだい一丁俺の鑑定を受けてくれれば、どんなもんか評価してやるぜ」
とファルゲンさんがにやりと笑い申し出る。
しかし、あまり持っているスキルを他人に知られるのは避けたかったので、「申し訳ありません」とせっかくの申し出だが辞退した。
リエリーさんも私が教えて貰うことで強くなりスキルを覚えることを知っているが、どうやら研修生については黙ってくれているらしかった。
「それでは交代で寝ましょう。私が鑑定を展開している間は大丈夫ですので、御三方は先にお休み下さい」
その私の言い分にラフバインさん、ファルゲンさん、ネルさんが各々返事をして自分たちの天幕に帰っていく。
私はカロルさん達サトゥルヌス家の息がかかったもの達を警戒して、ほぼ常時鑑定を展開し続けた。
そんな日々を三日ほど過ごし、あと一日ばかりで王都アレリアに着こうかという時、私が起きている時に鑑定索敵に感があった。
「皆さん襲撃です!!」
私は急いで各天幕に襲撃を報せる。
そして主要メンバーがアルベールさんの天幕に集ってきたので私が説明する。
「2kmほど先にカロルさん含め暗殺者を多数発見しました! その他、貴族やその私兵らしき冒険者など、数は総勢で100名前後! 相手方はこちらを全力で潰す気のようです!」
私が報告すると、ライラさんが「数的にはこちらが圧倒的に上ですな……アルベールさんの指揮する使節団だけで400はいる。しかし問題は兵の質ですか」と戦況を分析する。
「超級暗殺者一人でこちらの上級冒険者相当の兵が、100人束になっても相手にならないと思ったほうが良い。セーヌさん、カロルさんの他に超級以上の使い手は?」
ラフバインさんが私に問う。
「いいえ、いません。特級暗殺者が四名に、特級冒険者相当の貴族が十名ほど、それに多数の上級冒険者相当の者達で相手方は構成されています」
「ふむ……特級が14名ですか……一人辺りを兵10人で囲い込んでやっとといったところでしょう」
「となると……さほど兵力の差は大きいとは言えませんな。うーむ……」
ライラさんが唸る。
「カロルさんは戦ったことがある私が引き受けましょう。ファルゲン殿に4名の特級暗殺者をお任せしても……?」
「あぁ……それくらいは任せて貰っても良いさ。まぁバラけなけりゃの話だがな」
「では、残りは私達と兵の皆さんでなんとかお相手します!」
私がそう宣言し、分担は決まった。
私達の相手は特級冒険者相当の貴族10名が主だ。
一人ひとりを相手取らないようにすれば、上級冒険者相当の兵で囲い込めばなんとか相手が務まるかもしれない。
私達は各自役割分担を終え、開戦を待った。
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