130 使節団と共にセーフガルドへ
その後、王都アレリアの使節団に帯同していた商人達に商品を吐き出させて食料調達を済ませると、私達は共和国の使節団の一部と共に、王都アレリアを目指すことになった。
これには共和国の使節団員の一人として勇者ファルゲンさんが同行する。
サトゥルヌス家の暗躍を重く見た共和国使節団長のライラさんが頼んだのだ。
私達はフレちゃんさんと共に先行してセーフガルドや王都アレリアへ戻ることも考えたが、結局は使節団と共にゆっくりと王都アレリアへ向かうことを選んだ。
フレちゃんさんともリオネスベルクでお別れをする。
「フレちゃんさん、今度こそお別れですね」
「あぁ……また会えるのを楽しみにしているぞセーヌ」
「フレちゃん! また会いに行くからね!」
ネルさんが最後にフレちゃんの顔の辺りを撫で、フレちゃんさんは再び棲家の山へと帰っていた。
「さて……私達も馬車に乗ろっか」
フレちゃんさんを見送ったネルさんが言い、私、リエリーさん、ネルさん、そしてサーシャさんの4人も、ひとまずセーフガルド行きの馬車に乗り込んだ。
ラフバインさんは一人馬で行くという。
そうして使節団と同道してセーフガルドへ向かい、三日目の夜にはセーフガルドへ到着した。
使節団もここで一旦休息と補給をするという。
私はホウコさんが心配だったので、セーフガルドへ着いてすぐに冒険者ギルドへと向かった。
「ホウコさん……! ヨシノ……ホウコさんは!?」
私は受付で同僚のヨシノを見かけてすぐに声をかける。
「ふぇ? セーヌ? おかえり! ホウコさんならギルドマスター室にいるけど?」
「本当ですか? 良かったです。いますぐにお伝えしなければならないことがあります」
私は受付を越えると、ギルドマスター執務室へと入っていく。
「ホウコさん! ただいま戻りました。セーヌです」
「あら……おかえりなさいセーヌ。その様子だと……まだ依頼は達成できていないようね?」
「はい。それよりもまずお伝えしなければならないことがあります。まだ私からの早馬は届いていませんよね?」
「えぇ……セーヌからの早馬は来ていないわ」
そう執務室の机に座りながら答えるホウコさんに、私はサトゥルヌス家の暗躍と冒険者ギルドが敵に回った場合に彼らが取るかもしれない手段に言及した。
「そう……まぁ狙われるかもしれないことは分かっていたし、そう驚くことでもないでしょう。
暫くの間、上級冒険者に護衛についてもらうことにするわ」
ホウコさんはそう言って微笑んだ。
「せめてイアさん達パーティを置いていきたいと思っていますので、彼女達に頼んでみて下さい。それからサーシャさんの占いを受けることもオススメします。とても頼りになる神託を下さいますので!」
私はホウコさんの身を案じ、出来うる限りの対策を伝える。
「えぇ、分かったわ。セーヌったらそんなに心配しなくても大丈夫よ! サトゥルヌス家だって貴方を脅すために言っただけよ」
「それはそうかもしれませんが、あの方はやる時はやる人だと想うのです……」
私が遠い目であの日、幻影とは言え対峙したリードリヒさんを想う。
あの男は決して遊興で物事を行う人物ではない。
やる時はやるのだ。
「そう? とにかく私はイアさん達に頼むから大丈夫よ! まだ王都での依頼が達成されてないんでしょう? いってらっしゃいな」
ホウコさんが立ち上がり私の背をそう言ってぽんと叩く。
私はそれに「はい……」と力なく返事をし、ホウコさんの身を心配しながらもギルドマスター執務室を離れるのだった。
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