126 フレちゃんさんとリオネスベルクへ

 私が一人先行して村の入口付近へと行くと、フレちゃんさんの巨体が見えた。

 フレちゃんさんは休むようにしている。疲れているのだろうか?


「フレちゃんさーん!」


 私が声をかけ近寄ると、フレちゃんさんの背から一人の少女が降りた。


「サーシャさん!?」

「セーヌさん! お探ししていました!」


 サーシャさんがそのオレンジ色の瞳で私の姿をはっきりと捉える。


「サーシャさんどうしてこんなところに……それにフレちゃんさんと一緒とは一体……?」


 私はフレちゃんさんとサーシャさんとの間を視線を行き来させながら聞く。


「実は私、1週間くらい前に太陽神アールカ様のお告げがあったんです!

 それでセーヌさん達が今日この日にピンチに陥るって知って……お告げを頼りにセーフガルド北のフレイムエンドの住まう山まで行ったんです……!

 そこでちょうど帰ってきて休んでいたフレイムエンドさんとお会いして、お告げの内容を言ったんです、そしたら……!」


フレちゃんさんの方を見やるサーシャさん。


「セーヌ達がピンチに陥るというのでな。我が友の友は、我の友でもある。願いを聞き入れ少々の休憩の後にサーシャを乗せ、急ぎこちらへ舞い戻ったというわけだ」

「それでこの辺の農村でセーヌさんが居ると追加のお告げがあって……フレイムエンドさんに低空飛行で鑑定して貰いながら村々を渡り歩いていたんです!」

「我の鑑定の範囲では低空飛行でなければ、セーヌらを見つけられなかったのでな……。少々村人を脅かしてしまう結果になったが仕方あるまい」

「そうでしたか……そんなことが……」


 私に遅れ、リエリーさんとネルさん、ラフバインさんとがやってきた。


「これが……11古代竜が一角、煉獄のフレイムエンド……!?」


 ラフバインさんが口をぽかんと開け驚いている。


「ラフバインさん、フレちゃんさんは私達の友達なんです。どうか手を出さぬようよろしくお願いします」

「それは……分かりましたが、その煉獄のフレイムエンドが一体全体何故こんなところに?」

「それが……」


 私がいまサーシャさんに聞いた話を説明すると、「太陽神アールカの神託……」とラフバインさんは考え込むように黙り込んでしまった。


 そんなラフバインさんを横目に、私はフレちゃんさんに願いを口にする。


「フレちゃんさん、ことは一刻を争います。いまから私達と共に、リオネスベルクまで飛んでいただけませんか?」

「ふむ……事情は分からぬが我の速さが必要ということか。少々休憩は必要だが、いいだろう。休まり次第リオネスベルクまでの飛行、承った!」


 そう言ってフレちゃんさんが唸り声を上げた。




   ∬






 あれからフレちゃんさんの休息を待つ間、一度王都へ戻り王城区で議会の役人に事情を説明。公式な議会から使節団への伝令を預かった私達は、フレちゃんさんが休息する農村へと再び向かった。


 そして午後9時過ぎ、私、リエリーさん、ネルさん、サーシャさん、ラフバインさんの5人を乗せるとフレちゃんさんが天高く舞い上がった。目指すは中央山脈の左端にある街、リオネスベルク。


 中央山脈を超えて飛ぶことで、リオネスベルクまでの空の道を直線的に進むこともフレちゃんさんは提案してきたがそれは私が独断で「フレちゃんさんの体力的に心配です」と断った。フレちゃんさんには一度棲家の山で休息を取ってもらい、そして再びリオネスベルクまで飛ぶのが最も無難な旅路だと判断したのだ。急がば回れというわけだ。


 そうして7時間が経過し早朝4時過ぎにフレちゃんさんの棲家の山に降り立った私達は、フレちゃんさんの食事の為に周囲の魔獣を狩ることになった。これには魔獣討伐S持ちの私と、魔獣討伐A持ちだというラフバインさんが大いに貢献した。大型の魔猪を私とラフバインさんとで1匹ずつ狩り、ネルさんも鳥型魔獣を何匹か炎魔法で仕留めた。


 私が自分と同程度の大きさの魔猪を狩ってきたのを見て、ラフバインさんが驚く顔を見せた。


「セーヌさんは本当に特級冒険者なのですか?」

「はい。超級武器術を先日ようやっと獲得したところの特級冒険者です」

「それにしては実力的に……いやなんでもありません。詮索は厳禁ですなハハハ」


 そして仕留めてきた魔獣をネルさんが炎魔法でじっくり丸焼きにし、フレちゃんさんに差し出した。


「助かる……」


 と言いながら魔獣肉を食べるフレちゃんさん。毒ではないのだろうが、私達は魔獣肉を食べるのは遠慮しておいて、伝令を預かりに行った際に調達しておいた干し肉を齧った。

 6時間ほどの一時休息の後、再びフレちゃんさんの背に乗り空を駆けた。

 そうして10時間ほど経ち、リオネスベルクの街が見えてきた。

 

「見えてきました! リオネスベルクです!」


 私がフレちゃんさんの背で言い、リオネスベルクの街を一望する。

 戦いは既に始まっているように思える。北からも南からも部隊が展開している。

 街の中程に双方の部隊が集結し、膠着状態にあるようだった。


「フレちゃんさん、南側の陣営の更に南に降りてください!」

「分かった!」


 そうして私達は王都アレリアの使節団の陣営の南へと降り立った

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