119 サトゥルヌス家の使い
ラフバインさんの同行を約束し、サトゥルヌス家の返事を冒険者ギルドで待っていた私達。
午後の議会を終えたらしきツバキさんが戻ってきた。
「ツバキさん! 議会の方はどうでしたでしょうか?」
「ダンビエールの協力もあって、なんとか過半数を満たさないくらいに開戦派の勢力を弱体化することには成功したが、まだまだ予断を許さない状況じゃ。せめてリオネスベルクに滞在する使節団に早まらないように指示くらいは飛ばしたいところなんじゃがのぅ。議会の決定なく勝手には動けぬ」
そう言ってツバキさんがため息を漏らす。
「そうでしたか……サトゥルヌス家及び開戦派の方々はどのようなご様子で?」
「相変わらず開戦を唱えておる。よほど食料危機を起こしたいようじゃの。
今のところニールが黙ってみておるのがなんとも言えん。
ダンビエールを通して、話は行ったはずなんじゃがの……。
ところで……なんじゃ、セーヌとお主が一緒におるとはのラフバイン。
年を取ったのぅ、会うのは久しぶりじゃな」
「お久しぶりです。天狐様はお変わりなく……」
「お二人はお知り合いで?」
私が聞くと、ツバキさんが「こやつが20そこそこの頃に超級剣術を教えたんじゃよ。と言ってもすぐにこやつは更に上を行く神級剣術を開眼しよったがの」と教えてくれた。
「あの頃はお世話になりました……」
「儂としては世話らしい世話をしとらん感覚じゃな。なにせ3日かそこらで超級剣術を体得しよったからな。主の弟子のトリスタルは3ヶ月かかったんじゃぞ?」
ツバキさんはラフバインさんにジト目を送る。
「あれは不出来な弟子でして、ご迷惑をおかけしました」
「不出来も何もそれが普通じゃろ」
そんな話をしていると、冒険者ギルドに一人の執事がやってきた。
しかし……この執事、ただ者ではない……! 私には身のこなしからそれが分かった。
私はすぐに鑑定を飛ばす。
少々の攻防の末、鑑定結果は出た。
【カロル】
【人族。男性】
【執事S】、【超級暗殺者A】、【超級二刀苦無S】、【特級炎魔法B】、【元素感知B】、【元素操作B】、【鑑定妨害B】、etc……。
鑑定合戦に負けたのも厭わず、こちらへゆっくりと近づいてくると執事は言った。
「特級冒険者で上級冒険者ギルド受付のセーヌ様でしょうか?」
「はい……私がセーヌで間違いありません」
「私、サトゥルヌス家に仕える執事のカロルと申します。
面会の申請、誠に有難うございました。若様がお呼びでございます。
このあとお時間よろしければ、サトゥルヌス家までご案内します」
恭しくゆっくりと頭を下げるカロルさん。
こちらに仕掛けてくる気配はない。
いや、超級暗殺者の彼にとってみれば、ほんの一瞬殺気を見せるだけで事態は終わってしまうのかも知れない。それだけに私は冷や汗をかく。いつ襲われても対応できるようにしておかなければならない。同行するのに神級冒険者のラフバインさんが一緒なのが心強い。
きっとカロルさんが苦無を抜いたらラフバインさんがなんとかしてくれるだろう。
「はい。それでは案内よろしくお願いします。天狐様はどうしますか?」
「儂はすぐにオーベル家に向かう。ダンビエールが襲われては厄介じゃからな」
カロルさんをそう言って睨みつけるツバキさん。
しかしカロルさんはそんな視線を受け止めて平然としている。
私達はツバキさんと別れ、ラフバインさんを伴い貴族街のサトゥルヌス家へと向かった。
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