109 Interlude2 リオネスベルクで開戦派の動向を探る その1

 私はイア。

 故郷であるディッセントブルクのピンチを救ったことから、辺境の勇者って称号のようなスキルをゲットしているしがない上級冒険者だ。

 特級に上がるつもりはめっちゃあるわけだけど、残念ながら推薦してくれる超級冒険者以上に恵まれなかった。だから上級冒険者になって結構長いわけだけど、それなりに実力はある。

 それは私のパーティメンバーも同じだ。

 聖騎士スキル持ちの盾役のナミアに、聖女スキル持ちのヒーラーのソラ、そして怪我をしてセーフガルドで療養中の賢者ユリアス。

 フランシュベルトで出会ったこの3人はかけがえのない仲間である。


 そして今、私達はその腕を見込まれて、本来受けられないSランクの依頼を遂行するために、馬を走らせてセーフガルドの西にあるリオネスベルクまで来ていた。

 セーフガルドを出て2日経つ。急いで来てはいたが、途中馬を交換するわけにもいかなかったので休み休みだ。とはいえ私達の馬は名馬なので、早馬よりは早く着いただろう。


「開戦派の動向を探る依頼か……さて、リオネスベルクに着いたし、まずは冒険者ギルドに当たってみようかな?」


 腕組みをしながらそう決めると、ナミアとソラが「そうですね」と同意する。

 なので、私は街の中央付近にあるリオネスベルク冒険者ギルドへと向かった。


 馬を止めギルドへ入ると、何故だかガラの悪い連中が目についた。

 受付に行き受付嬢へ声をかける。


「やっほ、今日から暫くここでお世話になるイアって言います。よろ~」

「あ、はい。冒険者ギルドへようこそ!

 私、この街の中級冒険者ギルド受付のミーナと言います。よろしくお願いします!」

「うんうん、ミーナちゃんね。おっけ覚えた覚えた。んでさー聞きたいんだけど……」


 私はミーナちゃんに耳打ちするように体を近づけた。


「……なーんでガラの悪いやつらがめちゃ多いわけ? 普段からこうなん?」

「あぁいえ、ここ最近来た皆さんなんです……」

「そっかー。んじゃま、ギルマスっているかな?」

「はい……お母さん!」


 ミーナちゃんに呼ばれ、ギルドマスターの女性が私の元へとやってきた。


「こんにちは。リオネスベルク冒険者ギルドマスターのミランダと申します」

「上級冒険者のイアですっ! 今日から暫くお世話になります!」


 そうして冒険者カードを差し出す。


「はい?」


 渡された冒険者カードで何をすればいいのか困惑するミランダさん。

 私は小声で「依頼の方確認したら分かるかな?」と言った。

 私に言われるがまま、水晶に冒険者カードを当てるミランダさん。

 そして数瞬して事態を察知したらしい。


「どうぞ、パーティメンバーの方もよろしければ奥へどうぞ」


 とミランダさんが奥の部屋へ私達を通してくれた。

 三人で長椅子に座ると、ミランダさんが対面に座った。


「Sランクの開戦派の動向を探る依頼とは……あなた達は上級冒険者よね? どうしてこの依頼を……?」

「ん……まだ早馬がここへは届いてないのか、ホウコさんに届ける気がないのかは私には分かんないけど、セーフガルド冒険者ギルドマスターのホウコさん直々の依頼で私達は来たんだよね」

「そう……噂はセーフガルドまで届いていたのね……ホウコちゃんったら大きく出たわね」

「ん?? ホウコさんと知り合いかにゃ?」

「えぇ……ホウコちゃんとはギルドマスター会議でもお話したことがあるわ」

「へぇ、それなら話が早くて助かるー。んで、どうなん? 開戦派の連中は?」


 私が問うと、ミランダさんは困った様子で説明を始める。


「それが……使節団の人たちが武器や防具を買い集めるならまだ分かるのだけど、それだけじゃなく戦に必要そうな魔導具類や街の食糧の殆どを買い上げているわ。

 まるでここで誰かと戦いでも始めるか、あるいはここリオネスベルクを通って補給する誰かを邪魔するみたいに……ね」

「へーそれに加えて冒険者ギルドへも人を寄越してんの? なんかガラが悪い連中多かったけど?」

「えぇ、どうやら冒険者側にも裏切り者が何人か紛れ込んでいるようね。私、もしホウコちゃんからの早馬が届いたとしても、依頼の内容は明かさないつもりよ。こんな田舎に特級冒険者以上がいるわけでもなし、皆を無駄に不安にさせてもいけないじゃない?」

「ん……まぁ英断だと思うよ! 私達が知ってれば済む話だもんね、ニシシ」


 私が笑うと、ミランダさんもフフっと笑った。

 そうしてミランダさんが話を続ける。


「問題は食糧よ。実は共和国ライエスタからの使節団が今年来る予定なの。それが今滞在している王都からの使節団とかち合ってしまうと、食糧がまず保たない。

 王都からの使節団が共和国からの使節団とここでなんらかの交渉をして、共和国の使節団にお帰り願うならばまだよし、そうでないならば使節団同士での食糧の奪い合いが起きるでしょう……!」

「うひゃー食べ物の恨みは怖いって言うからね」


 私が言うと、ソラが「王都からの使節団は態と食糧の買い占めを……?」と問うた。


「えぇ……そうとしか考えられないわ。武装もしているし……。

 こんな小さな街で戦争なんて起こされてはたまったものではないわ……」


 ミランダさんが街の行末を心配した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る