101 レイナ姫との再会
「天山……随分と辺鄙なところにお住まいなのですね」
天山と言えばアレーリア王国の誰もが知る、王都アレリア北方にある山々のことだ。
共和国ライエスタとの国境を隔てる中央山脈の更に中央付近にある山々がそう呼ばれている。
天高く伸びる標高のとても高い山があるのがその名の由来だ。
「えぇ、昔から冒険者ギルドの相談役として王都でも顔の広いお方です。
ただしお会いする為には7000m級の山々である天山を踏破することが必要でして……」
「なんと……頂上にお住まいですか?」
「えぇ……」
レアさんが顔を伏せる。
天山の山頂に人が住んでいるなどと今まで一度も聞いたことがない。
いや……もしかしてだが……私はあることを思い出していた。
「とにかく、道中は大変厳しく、お会いするためには超級冒険者クラスの山岳隊が必要と言われています。稀に山を降りて来てくださる事がないわけでもないのですが、いつになるかは不明です……」
レアさんが「皆さんでは無理ですよね?」と私達に確認する。
超級冒険者クラスの山岳隊とあっては無理と言わざるを得ない。
この協力者は諦めるしかないのか……そう思った矢先。
「……天山であれば、少し時間はかかりますが、4日ほどセーフガルド方面に戻って頂ければなんとかなるかもしれません」
そうネルさんが言い出した。
「え? セーフガルド方面へですか?」
私が訳も分からずネルさんに尋ねる。
「はい。セーヌさんならお分かりでしょう。フレちゃんを使うんです」
ネルさんがそう生真面目な顔で言った。
「フレちゃんですか? あぁ……まさか!」
「はい。フレちゃんです」
ネルさんがしーっと人差し指を自身の唇に当てる。
ここで古代竜フレイムエンドの名を出すのは控えろということらしい。
そうか古代竜フレイムエンドの背に乗って天山を踏破するつもりなのかネルさん!
私は驚愕しつつも、それならばなんとかなるだろうと思った。
天山の協力者のもとへと行く手段はなんとか整いそうだ。
しかし、セーフガルド方面へ4日分も戻るとなればレイナ姫への謁見申込みの返事が先に届いてしまうかもしれない。
そう思った時、ギルドマスター室のドアを叩く音が聞こえた。
「あのぅギルドマスター。リネスというEランク冒険者の方々がギルドマスターにお会いしたいらしく……。緊急だと言って聞かないのです」
「もう、立て込んでいるのよ。もう少し待って貰いなさい」
レアさんがそう部下の女性に言う。
「リネス? いまリネスさんと言いましたか?」
私は受付の女性に確認する。
「は、はい。確かにEランク冒険者のリネスと……」
「レアさん、部屋へ通してください。おそらくはレイナ姫様です!」
「え! 本当ですかセーヌさん。貴方! そのリネスさん達を至急こちらへお通しして!」
「は、はい……!」
暫くして、リネスさんがレイナ姫を伴ってギルドマスター室へと入室してきた。
「やはり! リネスさん、それにレイナ姫も!」
私が二人を出迎えると、レイナ姫が私の手を取った。
「セーヌさん! こんなに早く、よく来てくれたわね!」
「いいえ、お手紙を頂いてから1週間ほど空いてしまいました……申し訳ありません」
「それくらいたぶん大丈夫よ! まだ議会では開戦の提案を受けていないって聞いてるわ。魔族との戦いなんて起こさせません!」
レイナ姫が私の手を握りながら言い切る。
「レイナ姫、それが……」
私が事の経緯を説明する。
「え?! 共和国との戦争になるかもしれないですって!」
レイナ姫が驚いて私の手から手を放し、続ける。
「どういうことセーヌさん! 魔族との開戦の間違いではなくて?」
「それが……武装使節団がリオネスベルクに滞在しているらしいのです」
「そんな! じゃあ魔族との開戦に私が反対したのを知って、開戦派が共和国との戦いに矛先を向けたっていうの!?」
「……まだ可能性の段階です」
姫様の言い分にリエリーさんが補足する。
「とにかく、議会の承認なしに戦いの火蓋が切って落とされることはまずないでしょう。
議会に顔が効く方を姫様はご存知ですか?」
「いえ……お父様以外には……」
私が聞くと、レイナ姫が俯いて肩を落とす。
態々開戦派の動向を探る為に私達を呼んだということは、どうやらその国王へも直接的に働きかけるのは限界らしい。
「ではやはり天山へと行くしかなさそうですね……」
私はそう呟いた。
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