77 戦利品

 フランシュベルト冒険者ギルド。

 建物に入ってすぐに私達は各々の戦利品を持ち寄って、買い取って貰うことにした。

 私が受付となり鑑定を開始する。


「まずは討伐の証を……」


 私がそう言うと、続々とリエリーさんとエルミナーゼさんが討伐の証の首飾りを出し始めた。


 【ゴブリンアーチャーの首飾り】。

 ゴブリンアーチャーが身につけていた首飾り。

 矢避けの加護の魔法が宿る。

 等級値100。


 【腕力のネックレス】。

 ゴブリンオーガが身につけていた首飾り。

 腕力が増大する。

 等級値500。


 【ゴブリンブラックスミスの首飾り】。

 ゴブリンブラックスミスが身につけていた首飾り。

 技術力が上がる。

 等級値1200。


「みなさん凄い成果ですね……!」


 そう言いながら鑑定を進める私。

 次は自分で拾ってきた首飾りだ。


 【知力の首飾り】

 ゴブリン宮廷術師が身につけていた首飾り。

 知力が増大する。

 等級値650。


 【奇術師の首飾り】。

 ゴブリン奇術師が身につけていた首飾り。

 運が上がる。

 等級値700。


 【女帝の冠】。

 ゴブリンエンプレスが身につけていた冠。

 支配力が大幅に上がる。

 統率が大幅に上がる。

 知力が大幅に上がる。

 等級値8000。


 特に女帝の冠の凄まじい等級値の高さに驚愕してしまう私。


「こちら女帝の冠ですが、等級値8000と出ました……」


 そう報告すると、おぉ……とパーティメンバーが沸く。

 キアラさんに至っては「等級値8000……!? この分前で私、数年は遊んで暮らせそうな気がします……」とくらくらと倒れ込んでしまう。


 討伐の証の他にも戦利品がある。


「さすがにゴブリンオーガの大斧を持ち帰るのは手間だったので、こちらを……」


 エルミナーゼさんがごとりと重そうな槌を一本だけ取り出して言った。


 【ゴブリンブラックスミスの槌】。

 ゴブリンブラックスミスが用いていた槌。

 特殊な金属で出来ている。

 歴戦の鍛冶師のみが扱える。

 等級値5500。


「こちら等級値5500とでました……これまた凄い一品ですね」


 確か、私の鑑定索敵ではゴブリンブラックスミスは戦場に1体しか居なかったはずだ。

 あれだけ多くのゴブリン達に武器を作った名匠ともなれば、これくらいの一品を装備として使っていてもおかしくないのかもしれない。


 そして私が奇術師のナイフや帽子、宮廷術師の法衣などを取り出す。


 【ゴブリン奇術師のナイフ】。

 ゴブリン奇術師が使っていたナイフ。

 等級値450。


 【ゴブリン奇術師の帽子】。

 ゴブリン奇術師が身につけていた帽子。

 運が上がる。

 等級値500。


 【ゴブリン宮廷術師の法衣】。

 宮廷術師にのみ着用を許された法衣。

 等級値700。


 【ゴブリンエンプレスナイフ】

 女帝が身につけていたナイフ。

 等級値6600。


「ゴブリンエンプレスナイフは等級値6600とでました。

 あとは宝石類ですね……私がエンプレスの杖や宮廷術師の杖から回収しました」


 【ゴブリンエリートスタッフの核】。

 品質の良いルビー。

 等級値720。


 【エンプレススタッフの巨大核】。

 大変貴重な魔法金属オリハルコンで出来た巨大な核。

 凄まじい元素力を秘めている。

 等級値12000。


「エンプレススタッフの巨大核ですが、こちら等級値12000と出ました……凄まじい元素力を感じます」


 話を聞いて、キアラさんは気絶してしまう。

 それをリエリーさんが介抱する。


「合計ですが……あまりにも等級値が高い物が多いため、ゼフさんを呼んできますね」


 私はそう言うと、ゼフさんを呼んできた。

 鑑定結果を伝え、しばらくするとゼフさんが合計査定額を出す。


「知らねぇ個体からの一品ばかりだったからなこんなもんだろう」

「60万エイダですか……」


 ゼフさんの見積書を見て、エルミナーゼさんがぽつりとそう言う。

 キアラさんを長椅子に横たえて戻ってきたリエリーさんが「さすがに神級遺物には及びませんね……」と冷静に言った。


「こっちで全部買い取るとしたらこの額になるが、どうする?」

「いいですか?」


 そう言って、リエリーさんが奇術師の首飾りと知力の首飾りの2つを1つずつ手に取った。


「では私はこれを……」


 エルミナーゼさんが腕力の首飾りを1つ懐にしまい込む。


 キアラさんは気絶している。


「キアラさんの分はどうしたらいいでしょう?」


 私が問うと、エルミナーゼさんが答える。


「本当ならばエンプレススタッフの巨大核をと言いたいところですが、さすがにそれは取りすぎでしょう。法衣とルビー、それに知力の首飾りを1つずつ彼女の為にとっておきましょう。

 セーヌさんはどうしますか?」

「私は……」


 エンプレススタッフの巨大核がもっとずっと大きく、大剣をこしらえられるくらいの大きさだったなら問答無用でそれを選んだと思うが、しかしナイフを作るにも足りないくらいの大きさだ。ならば……。


「私はこちらを頂きたいと思います」


 そう言って、ゴブリンブラックスミスの槌を指し示す。


「それで良いのか……? 残りは50万エイダってところだな。

 その他にレイドクエスト参加報酬で1万ほど各自に入るぞ」


 ゼフさんがそう言って髭を撫でる。


「4人で分けても2、3年は遊んで暮らせそうな額ですね……」


 リエリーさんがそう言うが、イマイチ実感が湧かない。私達には神級遺物の分配金もある。少し金銭感覚が麻痺しているのかもしれなかった。

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