74 ゴブリンエンプレス
ゴブリン宮廷術師の群れを倒しきり、辺りにゴブリンがいなくなったことを確認する為、私は鑑定索敵を再び展開することにした。今はもう鑑定の無作法について言っている場合ではない。
私は半球状に元素を飛ばし鑑定索敵を展開する。
私の少し後方でまずレェイオニードさんが網にかかった。
【レェイオニード】。
【人族。男性】。
【超級片手剣術A】、【超級盾術S】、【超級冒険者A】、【神速B】、【護衛戦闘S】、etc……。
そして右前方にエンプレスを捉えた。
遅れてやってきたレェイオニードさんに報告する。
「レェイオニードさん。右前方にエンプレスを発見しました!
周囲をゴブリン宮廷術師とゴブリン奇術師に囲まれているようです」
「お手柄だセーヌさん! 突っ込む!」
そう言って神速を発動して突貫するレェイオニードさん。
しかし、こちらが接近しているのは相手にも察知されていたようで、魔法攻撃が再び降り注ぐ。鋭い線を描き接近する光線を盾で弾くレェイオニードさん。
私はレェイオニードさんの影に居たので攻撃を回避することができた。
「ちぃ……上級光魔法アトミックレイか。厄介だな。
しかしこれだけなら十分無傷で防げます。城塞のレェイオニードを舐めてもらっては……!」
更に前へ進もうとするレェイオニードさん。しかし私は前方で莫大な元素力が周囲から集められていくのを感知した。
「待ってください……! 敵の攻撃……来ます!」
辺りの温度が一気に下がるのを感じる。
そして辺り一帯の木々が凍りつき始めた。
明確な気温の低下を察知した次の瞬間、鋭く尖った氷柱が私達めがけて襲ってきた。
レェイオニードさんは盾を掲げて氷柱に抗う。
「特級氷魔法……絶対零度か……!」
攻撃が終わった後レェイオニードさんの足元を見ると、具足が凍りつき、動けなくなっているようだ。そこへ光魔法らしきアトミックレイが再び迫る。
盾に弾かれて光を散らすアトミックレイ。
そして更にもう一度、前方で莫大な元素力が集まり始める。
私は目の前で魔法の連打を受け続けるレェイオニードさんの影に隠れ、何も出来ないままだった。しかし、このままではジリ貧だ。
「次の一発も頼めますかレェイオニードさん」
「えぇ……特級魔法もう一発くらいなら防ぐ分には問題はありません」
「ではよろしくお願いします。私は直後に突っ込みます!」
そうして、2発目の特級魔法、絶対零度が私達を襲った。
しかも、さきほどよりも元素の質が良い……!
より大きな鋭い氷柱がレェイオニードさんを貫くように迫る。
レェイオニードさんは「うおおおおお」と雄叫びをあげると、その盾に光が宿った。
オーラのようなものが盾から発せられ、氷柱を押し留める。
無事特級氷魔法、絶対零度を防ぎきった事を確認した直後、私は凍りついた地面を蹴った。
これだけの氷元素が周囲にあれば、活用しないのはもったいない。
私は氷元素を用いた古式神速を発動。自身の周囲に氷元素が集まり、私は滑るようにエンプレスへと迫った。アトミックレイの魔法が私を捉えようと蠢くが、その全てを踊るように滑り回避する。
「グギャ!グギャアア!」
視界に捉えたエンプレスが私を見つけて移動式台座の上で奇声をあげる。
だがアトミックレイの魔法は既に回避済みだ。踊るように滑って中空を飛びエンプレスへと接近する私。
「後は貴方を倒すだけです……!」
そう私が言葉を発した直後だった。
周囲の闇に紛れていたゴブリン奇術師が3匹姿を表した。
上級幻惑魔法を使って隠れていたのだろう。
「グギャギャギャギャ!」
私を空中で囲み嘲笑うゴブリン奇術師。
その手にもつ短刀で私を狙う。
しかし、その程度で私は止まらない。
何故ならば鑑定索敵で既にゴブリン奇術師が居ることは知っていた。
「ですから……! 対策は考えてあります!」
そう言って空中で身体強化して体を大きくひねる。
凄まじい勢いで回転を始めた私と大剣が、周囲のゴブリン奇術師を巻き込んで薙ぎ倒す。
3匹の奇術師を倒して着地すると、そこはゴブリンエンプレスの眼の前だった。
「これで最後です!」
私はそう宣言し、ナイフを持ち出して最後の抵抗をしようとしていたゴブリンエンプレスに鋭い一閃を放つ。ナイフが移動式台座に落ち、そしてゴブリンエンプレスの体が斜めに裂けた。
「接近を許した時点でほぼ私の勝利は見えていました、皆さんお覚悟を……!」
台座を持つゴブリン達や周りを囲むゴブリン宮廷術師を睨みつける私。
主君が没した事をいち早く察知した移動式台座持ちゴブリン達が台座の運搬を放棄して散り散りになる。ゴブリン宮廷術師たちは私に向けて再びアトミックレイを放とうと準備していたが遅い。私は即座に大剣を払い。ゴブリン宮廷術師を撃破する。
近づかれた後衛は無様に亡骸を私に晒すしか無かった。
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