68 緊急レイドクエスト

「ゼフさん。いますぐに災害クラスの緊急レイドクエストの発布をよろしくお願いします。

 こちら領主のゲンゾウさんからの書状となります」


 フランシュベルトギルドに飛び込んで、受付を超えたところでギルドマスターのゼフさんを発見した私は、即座にはっきりと要請した。


「災害クラスの緊急レイドクエストだって……?」


 そう言いながらゼフさんはゲンゾウさんからの書状を開けると、すぐに私に指示を飛ばした。


「セーヌ。いますぐにB~Sランクの緊急レイドクエスト発布だ!」

「はい。心得ています」


 既に依頼掲示板に掲示するための書類を作成し始めていた私は、依頼ランクにB~Sランクと記入。予め決められている報酬額も書き込む。

 そして完成された書類を持って依頼掲示板に近づいていく。


 セーフガルド同様、依頼掲示板には魔道具の他に鐘が設置されている。

 私はその鐘を持って大きく鳴らすと叫ぶ。


「B~Sランクの緊急レイドクエストが発布されました。

 冒険者の皆さんは詳細をご確認ください!」


 私がそう叫ぶと、ギルド会館内はさきほどまでの静けさと打って変わって、大きなざわめきに支配された。


「各ギルドへの伝達急げよ!

 セーヌ、レイドマスターはどうなってるんだ!?」


 書類を作成したはいいが、レイドの責任を担当するレイドマスターについてゼフさんへ報告をするのを忘れていた。


「それは――」


 私が口を開こうとしたその時、


「ゼフさん。レイドマスターは俺が引き受けることになっている」


 とレェイオニードさんが現れて言った。


「おぉ……超級冒険者のお前さんが居てくれるなら安心だな」


 ゼフさんが安心するように言う。


「レェイオニードさん。それに皆さんも……お着きになったのですね」


 私がレェイオニードさんと共にやってきたレイナ姫とリネスさんに声をかけると、


「元素列車から飛び出したセーヌさんの速さと言ったら……まったくとんでもないですね。

 あれなら元素列車に乗るよりも走った方が早く着いたのでは……?」


 とレイナ姫がまだ疲れているのか息を荒らげながら驚きの声をあげる。


「セーヌさん。エルミナーゼさんたちを呼んでもらえるかい?」

「はい。分かりました」


 返事をすると、私はギルド会館を出た。

 今日はたしか、エルミナーゼさんとリエリーさんのふたりとも、ミサオさんと一緒に出かけると言っていたはずだ。


「確か……錬金堂でしたか……」


 教えてもらった場所の記憶を頼りにフランシュベルトの街中を進む。

 5分ほどして、目的地の錬金堂にたどり着いた。

 そして入り口を開けると、からんころんとベルが鳴った。


「申し訳ありません。こちらに錬金術師のミサオさんたちは……」


 そう声を上げて店内を見渡すと……いた……!

 急ぎ足で近づき声をかける。


「あら……セーヌさん。どうしたんですか? 錬金堂に用事でも?」

「ミサオさん……錬金堂に用事というよりは皆さんに、特にエルミナーゼさんとリエリーさんに用事があるんです」

「私達にですか?」


 リエリーさんが不思議そうな顔をする。


「はい。実はB~Sランクの緊急レイドクエストが発布されました」

「なんと……!」


 驚くエルミナーゼさん。


「待ってください……まさかゴブリンキングですか!?」


 リエリーさんがくるくると指回しをして、すぐにその原因を言い当てる。


「はい。ゴブリンキング……いえ正確にはゴブリン軍師というレア個体に率いられたゴブリン軍団を確認しました。キングも潜んでいる可能性が高く、レイドクエスト発布となったわけです」


 詳細を説明すると、エルミナーゼさんが問うた。


「それではセーヌさんが私達を呼びに来たということは?」

「はい。お二方共にレイドクエストに参加して頂きたいのです。レイド責任者である城塞のレェイオニードさんもそれをお望みです」


 私がそう言うと、リエリーさんが「私のような者で力になれるでしょうか……?」と心配するような顔をしたが、エルミナーゼさんがリエリーさんの背中をぽんぽんと軽く叩くと、「大丈夫ですよ、上級冒険者ではありませんか」とリエリーさんを元気付ける。


「それではギルドへと向かいましょう。ミサオ、荷物持ちとして来た手前申し訳ありませんが私たちはこれで失礼します。あまり買い込まないように!」

「はい。それは大丈夫ですけど、みなさんお気をつけて!」


 ミサオさんに見送られ、私達3人はギルドへと急いだ。

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