67 ゴブリン軍団
「さぁ……行くわよ!」
リオネスベルクとフランシュベルトの途中駅で降り立った姫は仁王立ちで言い放った。
目前にはただの平野が広がっていて、ゴブリンが蔓延っている様子は一見してない。
私は放射状に前方へ向かって鑑定索敵を展開。
すると、いた!
【ゴブリンアーチャー】。
【ゴブリン族。男性】。
【初級弓術B】。
遥か前方に一匹のゴブリンアーチャーを確認。
ここから窺い知れるのはこれだけだ。
他の個体を確認するにはもっと先へ進むしかない。
「前方に一匹だけ反応がありましたが、ゴブリンキングの反応はありませんでした」
「そう……それにしても前方って一体どこまで鑑定したのセーヌさん!」
額に手を当てて目を細めるレイナ姫だったが、無論見えるわけがない。
私にも見えているわけではないのだから当然だ。
「まぁまぁ。セーヌさんの鑑定索敵に頼りながらですが、少しずつ前へ進みましょう。
斥候として頑張るのでしたよね? 姫様」
「えぇ……! もちろんよ!」
私達3人はゆっくりと着実にゴブリンアーチャーのいた方角へと歩み始めた。
そうして1時間ほどして、ゴブリン達の展開具合を確かめる事ができた。
未だ接敵こそしていないが、たくさんのゴブリンたちが鑑定索敵の網にかかっている。
索敵内容を把握している私が口を開く。
「まず第一に、南西の方角にゴブリン軍師なるレア個体を発見しました。
周囲にはたくさんのゴブリン達が控えていて、さながら王を待つ陣地を彷彿とさせます。
しかしゴブリンキングが発見できませんでした」
【ゴブリン軍師】。
【ゴブリン族。女性】。
【統率B】、【上級戦術立案S】、【上級用兵術A】、【中級風魔法A】、etc……。
私が報告すると、リネスさんが戸惑うように言った。
「キングではなく軍師であると……しかし、こうなってくると軍師が居ればきっとその軍師が仕える王――キングもいるであろうという話になってきますね……!」
「はい。そうなります。この規模の敵軍に更に王が率いる敵も合わさるのですから、以前リネスさんが危惧していたように、攻略には大隊規模の冒険者部隊が必要となる可能性が濃厚となりました。災害規模の緊急レイドクエストに準ずる依頼であると断定します」
私がそう明言すると、レイナ姫が腕組をしながら言う。
「うん。じゃあ一度戻ってライン騎士団の本隊に索敵情報を伝えましょう。
王が居る可能性が極めて高く、災害規模のレイドクエストが必要ってことも冒険者ギルドに周知して貰って、討伐はそれからよ」
「はい。それでは戻りましょう!」
まだ接敵していなかったのは運が良かった。
私たちは来た道をひたすらに戻り、かかった時間よりは早く元素列車の元へとたどり着いた。
すぐにゲンゾウさんやライン騎士団上層部、レェイオニードさんを含めて会議となった。
そして会議が始まると、レイナ姫が真っ先に口を開いた。
「まず初めに、南西の方角にゴブリン軍師なるレア個体と敵の大軍を発見したことを報告させて頂きます。これ以外にはゴブリンウォーリア、ゴブリン術師、ゴブリンアーチャー他、ゴブリンの進化個体も多数見受けられました。王こそ見受けられなかったものの存在は間違いなく、規模からして、災害クラスの緊急レイドクエストを冒険者ギルドが発布するレベルであると判断されました」
「なんと……!」
ゲンゾウさん始めライン騎士団の上層部がざわつき始めた。
「それでは、我が騎士団だけで取り敢えず侵攻をしましょう。
ライン騎士団本隊は冒険者の大隊に勝らずとも匹敵するだけの力を持っていますから」
ライン騎士団上層部の男性がそう提案し、
「うむ。南西方向に追い詰めていく形にすれば問題あるまい。
冒険者にはフランシュベルトから北東へ進んでもらい。討ち漏らした敵の掃討を要請しよう」
ゲンゾウさんがそう言って上層部の男性の作戦に首肯する。
「挟み撃ちというわけですね」
レイナ姫が戦略に納得する。
「分かりました。それでは私達は本隊を降ろし、元素列車でフランシュベルトへと戻ります。
そこで冒険者ギルドから緊急レイドクエストを発布して頂き、北東へと進みましょう」
それでゴブリン軍を問題なく挟み撃ちできるはずだ。
私達の任務は重大である。
挟み撃ちに間に合わなければ、討ち漏らしたゴブリン達がフランシュベルトの街を襲ってくる可能性もあるからだ。
私はそんな事態を想像して手が震えてしまった。
しかし、緊急レイドクエストを発布してさえしまえば、フランシュベルトに揃っている実力十分な冒険者たちが逃げてくるゴブリン達を一匹残らず片付けてくれるに違いない。
今できることは、一刻も早くフランシュベルト冒険者ギルドへ急ぐことだけだ。
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