60 上級冒険者への昇格
レェイオニードさんが「疲れた!」と宣言して、手紙だけ素早くしたためると、エルミナーゼさんに渡してきた。私には宿の場所を聞き、「また後で連絡する」とだけ言い残すと、レェイオニードさんは訓練場を去っていく。
そしてライン騎士団の訓練場を後にした私達4人は、レェイオニードさんの手紙を受付嬢へと渡すと、
「おめでとうございます、特級冒険者に昇格しました」
と、受付嬢がエルミナーゼさんを祝福。
そしてその場でエルミナーゼさんが、私とリエリーさんの二人を上級冒険者へと推挙してくれた。
「おめでとうございます、上級冒険者に昇格ですね!」
「はい。ありがとうございます」
「ありがとうございます! 上級冒険者なんてまだまだ私には早い気がしますが……」
リエリーさんはまだ謙遜をして、くるくると指回しをしている。
「それにしても、セーヌさんはいつの間にあんな芸当を身に着けたんですか?」
「はい……?」
「ですから、あの凄まじい一撃ですよ……!
以前即帝領や狩人の森で見た時以上に凄まじい一撃でした」
「あぁ、あれは……」
私はネルさんに古式魔法を教えてもらった事で、神速や身体強化などが全体的に性能向上したことを掻い摘んで教えた。
「なるほど、古式魔法を……」
そう言ってリエリーさんはごくりと唾を飲み込んだ。
「しかし、何と言っても城塞のレェイオニードさんです。
私の本気の一撃をあぁもあっさりといなしてしまうなんて、びっくりです」
私がそう言ってレェイオニードさんを称えると、エルミナーゼさんとミサオさんが「ふふふ」と事ありげに笑った。
「それよりも皆の昇格のお祝いをしましょう!
私、フランシュベルトで良いお店を紹介しますよ……!」
ミサオさんがそう言い出し、私達は昇格祝いにミサオさんの紹介してくれたお店へと向かった。
∬
「こちら、仔牛のポワレ~山菜を添えて~になります」
出された料理は王宮でも通用するのではないかという高級料理で、私とリエリーさんは驚愕してしまった。テーブルマナーは大丈夫だろうか?
そんなことを考えていて、あまり味が頭に伝わってこない。
「う~ん! おいしいです~」
とミサオさんはとても美味しそうに味わって食べている。
素直に羨ましい。
こんな料理を出されても全く動じない辺り、やはり育ちはお嬢様なのだろうか?
そんな事を考えていると、段々と私も場の空気に馴染んできた。
出されるコース料理も美味しいと感じ始めている。
「とても美味しいです、さすがはミサオさんですね。
こんなお店を御存知なんて」
「いえいえ、たまたま昔、叔父様に連れてきて貰っただけですよ」
「叔父様というと、あのフランシュベルト領主のゲンゾウさんですか?」
「はい、そうです。はっ! 私、叔父様も呼べばよかったですね!」
ミサオさんがはっとしてそう言って口を片手で塞ぐと、エルミナーゼさんが「ゲンゾウさんはお忙しい方ですから……」と言いながら料理への手を進める。
「そうかもですが、叔父様もお休みがあっても良いはずです」
ミサオさんは顔をしかめる。
「フランシュベルト領主が抱えるライン騎士団に、レェイオニードさん率いる王都からの精鋭が合流したのですから、いまは大変お忙しいのでは?」
私がそう言うと、ミサオさんが「確かに、それはそうかもしれませんが……」と項垂れた。
「そもそもレイナ姫でしたか? 一体何をしに来るのでしょうか」
リエリーさんが本質に迫る。
「さぁ……確かゼフさんが言うには視察だとか……?」
私が曖昧に答えると、「あとでレェイオニードさんから連絡があるはずです。それまで気ままに待つとしましょう」とエルミナーゼさんが笑顔で言った。
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