59 クアンタ神速による渾身の一撃
「私がレェイオニードさんとですか?」
「そうだ。不満かい?」
「いえ、そういうわけでは……」
ただ、エルミナーゼさんの昇格試験には部下を使ったのに、私の実力を確かめるのには自分自身でやるというのが気になっただけだ。
やんわりとその事を伝えると、「姫様を任せるに値するかどうか見たいんでね」とレェイオニードさんが答えた。
「レイナ姫様ですか……?」
「そうだ、レイナ姫だ。それともなにかい。俺が怖いかい?」
優男面でそんな事を言うレェイオニードさんだったが、別に怖いというわけではない。
ただどれほどの強さなのか興味深い。大怪我をしないように気をつけなければ行けないとは思うが、相手は超級冒険者だ。全力を以って臨もう。
「それでは肩をお貸しください。よろしくお願いします」
「おう」
私がいつものように慇懃にペコリと一礼すると、レェイオニードさんは意外そうな表情で短く答えて距離を取った。
「いつでも好きなタイミングで全力で来ると良い。俺は受けるだけに徹するさ」
「はい……?」
レェイオニードさんが構えてそんなことを言い、私はエルミナーゼさんと同様に木の大剣を使わされると考えていたので、素っ頓狂な声で返事をしてしまった。
私はどぎまぎしてエルミナーゼさんの方を見やると、エルミナーゼさんがこくりと頷いた。
きっとかの城塞のレェイオニードならば大丈夫だろうということだろう。
ならば、と私は全身全霊の一撃をレェイオニードさんに初手から叩き込む事にした。
いつものように周囲の風元素を使って神速を纏い、そしてそれをクアンタを意識して制御していく。更には訓練場を満たしていた土元素、太陽の陽光の元たんまりとある光元素を使用して身体強化を発動……。それをもクアンタを意識して効果を増強していく。
そして、私の周囲には風と共に渦巻く光の波動が現れた。
薄い緑色と黄色のような黄金のような光。
全身のみならず刀身にも爛々と輝くその光を纏い、全力で袈裟斬りを放とうとした時、
それまでただ立ち尽くしていただけのレェイオニードさんが腰を落として地面に盾を突き立てて構えた。
兜を降ろす仕草も見せたが、しかしいまは兜は身につけていない。
「行きますっ!」
私が言葉を発した刹那、レェイオニードさんが「俺の背後にいる奴らは歯食いしばれ!!」と観衆へ向けて言い放った。
そんな言葉を聞いたか聞かずか、レェイオニードさんの周囲にも大地から土元素が集まりつつあるように見えた。そして私は渾身のクアンタ神速からの袈裟斬りを放つ。
激突する緑光の大剣と、土色のオーラを纏った全身鎧のレェイオニードさんと大盾。
凄まじい轟音と共に、「うおぉおおおお!」という気迫を伴った怒声が聞こえる。
私はクアンタに突き動かされるままに大剣を振るったのだが、その大剣がじりじりとあの城塞のレェイオニードを押していた。
大量の光元素を纏った剣気は凄まじく、それを受け流そうとか上空へと盾をずらすレェイオニードさん。
暫くの攻防の後、レェイオニードさんは私の放った剣気を上空へと受け流すことに成功すると、大きな光の柱が上空へと伸びていった。
次は勢いを殺すためか再び地面に大盾を突き立てた。
この時、背後にいた観衆達が「ひぃいいいい」と悲鳴を上げつつ、レェイオニードさんの後ろから逃げていった。
地面と大盾とがぶつかり擦れ合い凄まじい音を鳴らし、私の大剣を受けている部分は拉げ始める。そして訓練場の壁ギリギリまで後退したレェイオニードさんと大盾は、終ぞ私の袈裟斬りの威力を完全に減退させることに成功した。
しかし、その背後の壁には大きな亀裂が入ったかと思うと、大きな物音を立てて壁毎吹っ飛んでいった。
「さすがお見事ですっ!」
そう言って剣戟を終えた私は剣を納めると、ペコリとレェイオニードさんに一礼。
私に周りの観衆たちから鑑定が凄まじい数飛んできていたが、私はそれをミサオさんに教えてもらった鑑定妨害で全て撹乱した。
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