54 鑑定妨害を教わります
結局あのあと、エルミナーゼさんの提案もあり、私はリエリーさんも旅に誘うことになった。
「リエリーさんもさっさと上級冒険者へと昇格した方がいいでしょう。
なんなら私が特級冒険者に昇格して、それから二人を上級に進言したって構いません」
「いえ、その私は……!」
「大丈夫です! リエリーさんの冒険者としての腕に足りないのは戦闘力くらいでしょう!
それもフランシュベルトで良い片手剣術の師に恵まれればきっと改善されます!」
エルミナーゼさんは乗り気で、リエリーさんは逃げ遅れるかのように旅に同道することになった。
そうして始まった旅路。
私は馬車の中で丸くなりながら、リエリーさんが旅に一緒に行くまでの過程を思い出していた。
「ではお二人に鑑定妨害をお教えしますね!」
ミサオさんが張り切ってそう言い、私は身体を起こした。
「はい。よろしくお願いしますミサオさん」
「よ、よろしくお願いします!」
私の挨拶にリエリーさんも続き、ミサオさんが私達二人に向き直った。
「鑑定妨害の基本は古式魔法に似ています」
「古式魔法ですか? 私は少しだけ使えます」
「えぇ……セーヌさんはもう古式魔法まで習得されているんですか?! それなら話は早いですが、リエリーさんもいることですし、私もそのように習ったので古式魔法を使えなくてもイメージで出来るように同じ教え方をしますね」
「はい! よろしくお願いします!」
リエリーさんが意気込んで再び挨拶をする。
「まず相手の鑑定の気配を察知します。
これは自身の周囲にある元素を感知するのと同じ要領で、常に自身の周囲に自分が支配する元素を薄く漂わせる事が基本です。
そうして自分以外が操作する元素を感知した瞬間。その元素を逆操作して滅茶苦茶に撹乱して相手に返します。これが鑑定妨害です!」
ミサオさんが胸を張り鑑定妨害の基本を丁寧に教えてくれた。
「それでは私が鑑定を仕掛けますから、お二人は言われたように試して見てください。
まずは自身の周囲に常に薄く元素を漂わせる事からやってみましょう!」
「「はい」」
私達二人がそう返事をし、鑑定妨害の練習が始まった。
私はいつも神速で風元素を纏っているのと同じように、馬車の中に漂う草元素を支配し薄く自身の周囲に漂わせた。
「では行きますよ!」
ミサオさんがそう宣言し、鑑定を発動したようだ。
私は即座に自分以外に操作されている元素を感知した。
厳密に言えば、私はクアンタの動きを感知したのだが、ここはミサオさんの教え方に習うことにしよう。
私は感知した自分以外の元素の流れを滅茶苦茶に操作仕返すと、ミサオさんに送り返した。
「うぅ……セーヌさん結構です! 鑑定失敗しました。
まさかこんな容易くできるようになるだなんて……! さすがですセーヌさん!」
「いえ、私は別に……教え方が良いのでしょう」
そう、私の研修生は教える側が教えるのが上手ければ上手いほど、私の習得スピードも上がる。だからここで褒められるべきはミサオさんだ。
「私もなんとなく掴めました……! あとは相手側の元素を操作すればいいんですよね?」
リエリーさんも要領を掴めたようで、数分練習してミサオさんから「はい。結構です!」と鑑定妨害の成功を告げられた。
「お二人とも流石ですね。こうも短時間で鑑定妨害の修練が終わるなんて、中々ないことですよ」
エルミナーゼさんが出来の良い私達を眺めて笑った。
「はぁ……ここまで簡単に身につけられてしまうと、あとはどうやってフランシュベルトまでの道中を過ごすかですね。早々に暇になってしまいました」
ミサオさんが笑顔ですねているような様子を見せる。
「それでは……私が現フランシュベルト領主であるミサオさんの叔父上の話でもしましょう」
「ちょ、ちょっとエルミナーゼ!」
ミサオさんは教えるつもりがなかったようで、エルミナーゼさんに慌てた様子を見せる。
「ミサオさんはお嬢様だったのですね……そのように高貴な出身だったとは……」
「はい! 私もどこぞのお嬢様であろうとは思っていましたが、びっくりです!」
私とリエリーさんがそうミサオさんを評すると、ミサオさんは頬を膨らませた。
「酷いです! 私、お嬢様扱いされるの嫌いなんですからね!
呼び方や態度を変えたりとかしたら怒っちゃいますから!」
ミサオさんがそう私達二人に言い放った。
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