50 神級遺物
即帝領の大太刀を皆がじっと眺める中、私は開いた扉の先が気になって仕方がなかった。
なので聞くことにした。
「それで、あの。扉の先へは行くのでしょうか?」
「うーん……セーヌさん鑑定索敵ではどんな感じ?」
私の問いに大太刀を持ったイアさんが真面目な表情になって問い返す。
言われ、結界が解かれて以降初めて、私は扉の先へと鑑定の範囲を広げた。
しかし反応はない。
「どうやらこの先に新たな強敵がいるというわけではないようです。
私の索敵範囲内には一切反応がありません」
相変わらずミサオさんの鑑定に失敗する以外に、特筆すべき反応はない。
変わったことと言えば、今回のダンジョン探索の途中辺りでナミアさんが特級聖剣術Aを身に着けたことくらいだろう。
「そっかー。リエリーさんがいるし仕掛けは万全そうだし、いっちょ行ってみるか!」
いつものようにニシシと笑うイアさん。
その笑顔にリエリーさんが「はい!」と応じ、ナミアさんとソラさんが無言で首肯した。
「では、参りましょう!」
私もこの先にあるであろう即帝の居室に何が待ち構えているのか知りたい。
期待で胸が踊るように足早になってナミアさんの後に続いた。
扉の先へ足を踏み入れると、シンプルに棺が2つ置いてあるのが目に入った。
豪華な装飾の施されたそれら棺に皆の目の色が変わる。
「完全に手つかずの状態で装飾が残っていますね……これらだけで数十万エイダの価値があるのでは?」
エルミナーゼさんが財宝の価値を値踏みすると、ミサオさんが「いえ、これはそれ以上ですよ!」と頭を振った。
「左側の棺に付けられている大きなエメラルド。
私はあんな大きなものは見たことがありません!
きっとあれだけで100万エイダは下りませんよ!」
ミサオさんに言われ、私は大きなエメラルドを鑑定してみた。
【エメラルドエンプレス】。
即帝の妃である皇后に即帝から送られたエメラルド。
その美しさに神すら欲すると言われる神級遺物。
等級値25万。
「皆さん、ミサオさんの見立てが正解の気がします。
左の棺のエメラルドですが、等級値25万と出ました……!」
「なんだってー!?」
「等級値25万ですか!?」
イアさんに続きリエリーさんが驚愕の表情を浮かべる。
「では、間違いなく……神級遺物ですね」
ミサオさんが私の顔を見て問い、それに私が小さくこくりと頷いた。
「どうやら罠は仕掛けられていないようです」
冷静に罠の有無をチェックしていたリエリーさんが皆に報告すると、イアさんが「いよっしゃー」と棺に手をかけた。
「では、開けまーす」
イアさんがそう宣言し、右側の棺を開けた。
しかし――中には何も入っていない。
「ほへ?」
イアさんが素っ頓狂な声を上げ、みんなもその開かれた棺の中身が空っぽだった事に戸惑いの声を上げた。
「まさか盗掘済みですか……?!」
「いや、そんなわけないっしょ。そのエメラルドや大太刀はなんなのって話じゃん!」
ソラさんの問いに、イアさんがブンブンと首を横に振る。
「ではお妃さんの方も開けてみましょう!」
ミサオさんの提案に、みんなが賛同してイアさんが巨大なエメラルドの装飾が施された棺へと手をかけた。
ゆっくりと開かれる棺の蓋。
しかし、やはり――、
「――こっちも空だよ……!」
イアさんが残念そうに報告し、私たちは完全に開かれた棺の中身を見た。
何もない。そこに遺体でも入っていれば良かったのだが、中には見事に何も入っていなかった。即帝は一体どこへ消えたというのだろうか?
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