49 即帝領の宝物再び
エルミナーゼさんは即答で「構いませんよ」と返事をしてくれた。
よって、私たちはイアさん達と一緒に再び、即帝領未踏領域の宝物部屋へとやってきていた。
「ここが大太刀のある部屋です!」
リエリーさん勝手知ったるなんとやら、2度めの探索だがしっかりとダンジョンの構造を把握している辺り、さすがは名探偵Sだ。
「ふぅ……外にいるアンデッドと違い、上級アンデッドの巣窟とは……。
私が聞き及んでいた即帝領とはまるで別物ですね
事前にセーヌさんから聞いていた通りの高難易度ですね」
エルミナーゼさんがダンジョンの感想を漏らす。
「本当なら罠や仕掛けが大量にあったのですが、ほとんどは賢者のユリアスさんが、残りは全てリエリーさんが解除に貢献してくれました。
番人を倒した事でこれでも発生する上級アンデッドは減った方なんですよ」
私がそう伝えると、エルミナーゼさんは「なんと……」と目を見開く。
きっとリエリーさんの貢献に驚いているのと、即帝領にまだ危ない罠や仕掛けが施されているという情報がなかったからだろう。
私もリエリーさんに聞く限りでは、即帝領は中級冒険者ならば対処できるアンデッドが出現する、超初級者向けダンジョンという感じだった。
にも関わらず、こんな勇者を含む上級冒険者パーティーでも踏破が難しい未踏領域が未だあったということに私自身驚きを隠せない。
「よっしゃ! ミサオさん一発結界に触れてみよっか! 頼んだー!」
イアさんがそう言うと、手を合わせて拝むような仕草を見せると、ソラさんもそれに続き祈るように十字を切って両手を組んだ。
「それでは……行きますね!」
ミサオさんがそう宣言し、ゆっくりと即帝領の大太刀が納められる赤の結界へと近づいていく。そして、ミサオさんの手が結界に触れたその瞬間。
すっと消える赤の結界。
「やった! 成功しました!!」
リエリーさんが叫び、いやったー! とイアさんが大太刀に駆け寄る。
「ホンモノだよね!? セーヌさん」
「はい。前回と同じく間違いなく本物です」
「触っておけ? リエリーさん」
「はい。仕掛けは完全に解除されています。触っていいかと」
私達二人に確認を取ると、イアさんは即帝領の大太刀へと手をかけた。
イアさんが大太刀を持ち上げると、刀の台座が持ち上がる。
そして、番人部屋の更に先――恐らくは即帝の居室と思われるそこへの扉が開かれた。
「やった、本物の即帝領の大太刀! いや重い……!
これ身体強化なしに実戦で使うのは厳し目だよ。
即帝はこんなの使ってたのかな!?」
大太刀を携えたイアさんがそう評し、鞘から抜こうと試みる。
「うん、抜ける抜ける。錆とか一切ないっぽいね。
そういうのからも守る結界だったのかな?」
そうして、抜身となった即帝領の大太刀。
私やエルミナーゼさんの持つ大剣ほどの長さを持っている。
しかしその刀身は細く、研ぎ澄まされていた。
「ルマさんが使えるという、刀という剣種でしょうね。
さすがは本物です、間違いないでしょう」
リエリーさんも太鼓判を押す。
「良かったです! 私の家系に即帝さんの血が入っていただなんてびっくりですけど!」
「……」
ミサオさんは嬉しそうに両手で小さくガッツポーズをし、エルミナーゼさんは黙り込んで即帝領の大太刀をその翡翠色の瞳でじっと見つめていた。
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