39 即帝領の宝物と任務達成報告

 番人を倒した部屋の先。

 私達を待ち受けていたのは、本物の即帝領の大太刀が安置されている部屋だった。

 更に部屋は先に続いているようだが、深く扉が閉じられている。


「おおおおお!」


 イアさんが雄叫びをあげて駆け寄ろうとするが、すぐにリエリーさんにより「待ってください! 罠があるかもしれません!」と制止された。


「これが……本物の即帝領の大太刀……!」


 【即帝領の大太刀】

 即帝が身につけていた太刀の内の一つ。大太刀。

 等級値1万8000。


 私が鑑定結果を伝えると、パーティのみんなから歓声が湧く。

 しかし、リエリーさんだけは浮かない顔をしている。


「駄目ですね……。魔法によって結界が敷かれています。

 この大太刀を手に入れる事ができるのは、即帝の近親者や子孫のみでしょう」

「そんにゃ~せっかくここまで来たってのに~」


 イアさんがぶーぶーと文句を言って、結界に何度か剣撃を加える。

 しかし結界を壊せそうになかった。


「駄目でしょうね。イアの本気の剣にびくともしないとなると……。

 私よりも遥かに硬い結界が張られていると見ていい」


 ナミアさんが残念そうにそう漏らす。


「有り難いものでも見たことにして、諦めましょうか?」

「いんや! サウスホーヘンへ一度戻ろう!

 それで鍵を売ったって女の人を探ろう! そしたらこれ手に入るかもじゃん!」


 ソラさんの諦観に対して、イアさんは一切譲る気がないようだった。


「この太刀の仕掛けを突破したとして……。

 先には何が待つのでしょうか? 即帝ご本人のアンデッド?

 それとも単純に即帝のお墓でしょうか?」


 一体どんな財宝が待っているのか想像も付かない。

 云千年前に魔族領を除く大陸全土を短期間に統一したという即帝。

 その帝墓にはどれだけの金銀財宝が収められていることだろう?

 もしくは先程の番人のようにアンデッド化しているかもしれない。

 それは一体全体、どれほどの強敵だろうか……?


 私の冒険者魂が疼いた。




   ∬




「ひとまず依頼達成という形ですが、それでよろしいでしょうか?」


 イアさんに確認すると、「うんまぁおっけー……」とやるせない返事が帰ってきた。


「それでは、確認させて頂きます」


 そう言って、私は回収してきた大きな鎧を鑑定した。番人が身につけていたものだ。


 【エンシェントマジックアーマー】

 即帝時代に作られた魔法合金で作られた鎧。

 すべての上級魔法までの魔法を跳ね返す。

 等級値4500。


「はい。間違いなく即帝時代の一品ですね」


 この合金を溶かすことができるならば、それを使って一体どんな防具ができあがるのだろう? そんなことを考えながら、鑑定結果を口にした。


「報酬ですが、事前に想定されていた即帝領の大太刀ではないので、大幅な減額となります。それでよろしいですね?」


 私が確認し、イアさんが再びやるせなく左手をあげ「はぁい」と答えた。


「それではこちら報酬となります。鎧の方はどうされますか? 買い取りますか?」

「サンクスサンクス! いや、鎧は買取りはいいよ。せっかくの魔法合金なんでしょ。

 なんとか自分たちの装備に打ち直せないか検討してみる。

 ナミアの盾をこれで作ったら最強じゃね? とか思わなくもないし」


 それからリエリーさんと私に報酬を分配するイアさん。


「私達が鎧貰う分だけ、報酬はリエリーさんとセーヌさんで使ってよ!」

「ありがとうございます!」

「はい。頂戴します」


 報酬を受け取ると、リエリーさんは再び得たBランク依頼達成報酬に大変ご満悦のようだった。大幅減額されてこの額をほいっと私達二人に分配してしまう辺り、イアさん達パーティーの財政状況は大分良いのだろう。


「そんじゃおつおつ! リエリーさんもありがとねー!」

「はい。戦闘でご迷惑をおかけした分、仕掛けや罠で貢献出来た気がします……!

 またなにかあればご一緒しましょう! できればダンジョンは止めてほしいですが……」


 私もリエリーさんに「お疲れさまでした」と挨拶すると、「セーヌさんもお疲れさまでした!」と元気に挨拶をしてくれた。

 そうしてイアさん達が去っていき、私はいつものように冒険者カードを水晶に当てる。


 【乗馬S】

 様々な動物を乗りこなすことができるようになる。


 これはゴブリン長老討伐に出向いたときに獲得したスキルだ。

 イアさんに乗馬の方法を教わったことでSランクが獲得できている。


 【上級冒険者S】。

 上級冒険者としての経験を飛躍的に成熟させる。

 また、初級冒険者の中級冒険者への昇格をギルドに進言できるようになる。


 ついに私はイアさん達とパーティーを共にしたBランク任務をクリアしたことで、上級冒険者Sのスキルを獲得することができた。あとは特級冒険者以上の人に冒険者ギルドで上級への昇格を進言して貰うだけだ。しかし、特級以上の冒険者は稀だ。故に、上級冒険者スキルさえあれば、Aランクまでの依頼を受けられるようになっている。

 今後の冒険を行う上での最重要スキルを得られたと言えるだろう。


 【罠探知S】。

 罠を見つけることができるようになる。


 【仕掛け解決S】

 仕掛けを突破できるようになる。


 【上級精神統一S】

 精神を鋭く統一する。


 リエリーさんに罠探知や仕掛けの解決方法を師事したことで、これらのスキル郡も得られていた。私も教わっているときにリエリーさんと同じく指回しをしていたからだろうか。

 上級精神統一Sスキルまでゲットできている。

 傍から見れば指回しを延々としているちょっと変な二人に見えたかも知れない。

 しかし、名探偵スキルを得られる様子はない。

 余程の実績がなければ得られないユニークスキルなのかもしれない。


 今回もたくさんの重要スキルを獲得することができた。

 また明日からも驕ることなく頑張っていこうっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る