38 即帝領の番人
「私はとてもとても、巨体のアンデッドを相手にできるとは……」
既に、私の鑑定範囲にはその番人がひっかかっている。
そして巨体のアンデッドだという話は事前に聞いていた。
【アーマードスケルトンナイト】
【アンデッド族。男性】
上級大剣術A、上級体術B、執着A、初級鑑定妨害A、etc……。
私は鑑定で得た情報を皆に伝える。
こうやって事前に情報が得られていれば、きっと賢者の人も安易に魔法攻撃で先制などしなかっただろうに。そう思うと共に、普段のギルドでの業務があったからこそ得られたこの鑑定Sに本当に有り難みを感じ、そしてまた冒険者ギルドでの仕事も頑張ろうと思える。
私の言葉にイアさんがニシシと笑う。
「セーヌさんは謙遜しすぎだって! 大丈夫だよ。
ユリアスの奴は油断して使える最大の魔法を撃っちゃったのが原因で怪我したけど、
そもそもあれはあいつが悪い。普通にナミアが先制すれば余裕だって」
「そうは言いますが、私はモンスターの大剣術使いとは戦ったことがありません。
対人であればエルミナーゼさんと経験があるのですが……」
「うーん。でかいだけ、アンデッドなだけで、人型であるのは変わらんと思うよ?
ねーナミアっち」
「はい。基本は大男と戦うのと変わりありません。
それに先制攻撃するのが私であれば、執着の効果で敵はほぼ私だけを狙うでしょう」
本当にそうならば、問題はないのかも知れない。
けれど、私は全滅の憂き目に合うのだけは絶対にごめんだった。
だからダメ押しにリエリーさんの意見を聞くことにした。
「リエリーさんはどう思いますか?」
「うーん。話を聞く限りでは行けそうに思いますが、相手が上級大剣術を使い、更に魔法反射まで有しているとなれば、私には何も出来ません。
きっと前衛3人の邪魔になるだけですので、ソラさんと同じく後方に待機していますよ。
部屋にも見たところ罠や仕掛けはなさそうです。
行けるのではないでしょうか?」
リエリーさんは左手の人差し指を高速で回転させて考え込みながらも、行けるという結論を出してきた。
信頼している名探偵のリエリーさんの見立てであれば、私は信じてみても良いと思った。
「それでは、やってみましょう。ですが無理だと思ったら撤退の合図は私が出します。それでいいでしょうか?」
「おっけ!」
イアさんが答え、他の三人も「分かりました」と賛同の意を示す。
「んじゃま、行ってみましょっか!」
「では、いきます!」
イアさんの掛け声でナミアさんが突っ込んだ。
そして気付いた番人にシールドバッシュ。
しかし番人は全く怯む様子を見せない。
さすがの巨体で、上級聖騎士Sスキルを持つナミアさんのシールドバッシュを受けきったのだ。全身に鎧を纏った番人は持っていた大剣をナミアさんへとゆっくりと振るった。
「受けて立つ!」
ナミアさんが盾を構えて待って数瞬。
凄まじい轟音を立ててナミアさんの盾と番人の大剣が衝突する。
しかし、見事にナミアさんはその攻撃に耐えきっている。
「んじゃ私らも行くよセーヌさん!」
「はい!」
神速を発動して、私とイアさんの二人が番人へと突っ込んだ。
まずは私が番人の大剣へと飛び乗って、そこから更に飛翔。番人の頭部へと一撃。
しかし兜に阻まれてしまい攻撃はほぼ届いていない。
だが兜には深い傷が刻まれた。
余程名のある武人のアンデッドなのだろう。
その身を守る鎧兜も最上級の装備のようだ。
私の見立てでは、おそらくは全身鎧に魔法反射の効果がある。
何故ならば、私の鑑定で番人のスキルに魔法反射がなかったからだ。
「ングォォォオオオオオオオオ」
雄叫びを上げる番人。
ブオンと音を立てながら薙ぎ払われた大剣が私達を襲った。
しかしまたもやナミアさんが大剣と私達の間に入り受ける。
軋むように唸りを上げる白銀の盾と鉄錆た大剣。
イアさんは番人の胴を数度切り払ったようだが、全身鎧に阻まれて全くダメージを与えられた様子はなかった。
「セーヌさん! 頭を狙いましょう! まだ頭のほうが勝機がある気がします!」
後方でリエリーさんが叫び。私は呼応するように右手をあげて肯定の意を示す。
「イアさん。私が全力で頭を狙います!」
「おっけーサポートするよ!」
私は全身に風元素を纏い、刀身へも一番場に多かった闇元素の力を這わせていく。
イアさんとナミアさんの二人が番人の相手をする中、少し離れたところで元素を集める私。
「いいですかみなさん!
私の渾身の一撃でダメージが通らなかった場合は撤退を!」
私はそう叫び、周囲に満ちていた元素を刀身へと這わせた。
元素の闇の力で普段から黒光りしている大剣が完全な漆黒を纏う。
そして再び、番人が大きく大剣をナミアさんへと振るった。
重苦しい音を立ててナミアさんの白銀の盾が揺れる。
そう何撃も耐えきれる一撃でもなさそうに見えた。
「行きますっ!」
敵の大振りのタイミングを逃さず、再び番人の大剣を足場に番人の頭部へと全力の一撃を放った!
番人の兜と私の大剣とが軋み合う。
私も全力で風元素と闇元素で身体強化して、自らの刀身を押し切ろうと粘る。
「ハアアアアアアアアア!」
そして、黒と緑の元素のオーラが私を覆い、漆黒の大剣となった私の武器が番人の頭部を兜毎見事に断ち切った!
頭部を失った番人は目から元素の輝きが失われ、膝から崩れ落ちた。
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