24 サウスホーヘンのギルドにて
私達はイアさんの優勝セレモニーを見てからギルドへと向かう途中だ。
帰り際にイアさんから、「優勝賞金はギルドで受け取るらしーよ」という言付けとイアさんからギルドへの手紙をルゼルフさんから貰ったからだ。
「さて、せっかくサウスホーヘンへと来たのですが……セーヌさん。ギルドの方からは何日の休暇を頂いているんですか?」
ミサオさんが私の顔を覗き込んでくる。
「はい。ギルドからは今日合わせて3日間を休日として頂きました」
「3日間ですか……それならば明日は観光でもしましょう! ね? エルミナーゼも」
ミサオさんの提案にエルミナーゼさんが頷く。
「そうですね……サウスホーヘンには開放劇場の他にも海辺の街並みなど見るべき箇所はありますから、明日は海の方へ行ってみましょうか」
エルミナーゼさんがうんうんと首を何度か縦にふる。
私も同じ意見だったので、今日は宿に戻り休み、明日はサウスホーヘンの港町へ出かけることになった。
そうこうしているうちに、ギルドへと私達は到着した。
ギルドへ入ると、前回と同じ少し幼気な容貌を持つ受付嬢を見かけたので彼女に話しかけることにした。
「こんにちは」
「あ、こんにちは! えーっと確か……」
受付嬢は私の名前を思い出すかのように「セーヌさん……でしたよね?」と呟いた。
私はこくりと頷くと、バッグからイアさんの手紙を取り出し、受付嬢へと手渡した。
「こちら、闘技大会優勝者のディッセントブルクのイアさんからのお手紙です」
「闘技大会優勝者さんからのお手紙ですか……? 確認させて頂きますね」
手紙の封を開けると、中からは手紙と冒険者カードが出てきた。
手紙の中身を確かめる受付嬢だったが、すぐに不思議そうな表情となった。
そして水晶を取り出すと、手紙の中に入れられていた冒険者カードを当てた。
「確かに……冒険者カードはディッセントブルクのイアさんのものですね……。少々お待ち下さい」
受付嬢はそう言って、奥へと下がっていく。
きっと上司に確認をしに行ったに違いない。なにせ手紙には優勝賞金を全て私に渡すように書かれていたからだろう。
ミサオさんとエルミナーゼさんの二人は、私が受付嬢と話している間、依頼掲示板を物色していた。3人パーティーであれば観光がてら低ランクの捜索依頼をこなすのも面白いのかも知れない。
すると、受付嬢がもう一人の受付嬢を連れて戻ってきた。
制服の上からでもわかるほどの大きさの胸。癖毛の長髪は薄い桃色をしている。セーフガルドではあまり見かけないような冒険者ギルド受付の容姿に私は驚いた。
「あら、こんにちは。貴方がセーヌ? ホウコから聞いてはいたけど本当に手紙に書かれていた通りの真面目そうな子なのね」
そう言って、女性が腕組をしながら私をまじまじと見つめてくる。
「ホウコさんのお知り合いですか?」
「えぇ……まぁ。昔からの腐れ縁というやつかしら……私も昔はセーフガルドでギルド受付をしていたのよ。あぁそうだった……私の名前はアシェルーヤ。ここサウスホーヘンで冒険者ギルドマスターをさせて貰っているわ」
「ギルドマスターさんでしたか……」
私が驚くと、アシェルーヤさんが「見えないってよく言われるわ……」と妖艶に笑った。
「それで……優勝賞金だけを貴方にってお話で、冒険者カードまで添付されてたって話だけど……結果は聞いているから恐らく本当だと判断しました。手紙には開放劇場副支配人のルゼルフさんの印まで押されているし問題ないでしょう。優勝賞金をお渡ししますね」
私は安心した。手紙だけでは信じてもらえないかと思っていたからだ。
手紙の中にはルゼルフさんの印が押されていたらしく、それが決め手になったらしい。
「それでは……優勝賞金の1万エイダを用意しますので少々お待ち下さい」
幼気な容貌の受付嬢がそう言って、足早に奥へと引っ込んでいく。
さすがに額が額なだけに、受付に一時的に保管されているエイダだけでは足りなかったのだろう。
「ところで……」
私はアシェルーヤさんに気になっていた事を聞くことにした。優勝賞品のことだ。
「興味本位なのですが、優勝賞品がどんなものか教えて頂けませんか?」
「えぇ……構わないけれど。メインはここサウスホーヘン領主との食事会をする権利。それに即帝領の鍵、他に辺境勇者の称号かしら」
「なるほど……食事会に鍵、そして称号ですか。ありがとうございました」
どれもが勇者であるイアさんにとっては必要そうに思える。
私が気になったのは即帝領の鍵だけだ。
即帝領は既に多くの冒険者に攻略されている遺跡だ。
稀に新たな階層が見つかることがあるという。
新たな冒険の匂いに大いに興味をそそられる。
「お待たせしました。こちら賞金の1万エイダとなります」
幼い容貌に見える受付嬢が私に1万エイダが入った布袋をどさりと置いた。
中を確認すると、その全てが100エイダ硬貨で構成されていた。
私はいつも受付で行っている作業を思い出すと、中身にしっかり1万エイダ入っているか確認していく。そして暫くして確認を終えた。
「確かに……1万エイダ確認させて頂きました」
私は優勝賞金を受け取りバッグの中へと押し込んだ。
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