20 闘技大会当日~港砦サウスホーヘン~

 【対人戦闘S】。

 対人戦闘を極めて上手に的確にこなすことができるようになる。


 【対人直観S】。

 相手の力量を直観的に見極めることができるようになる。


 セーフガルドを出る馬車に乗る前に、冒険者ギルドで先日までの特訓の成果を確認する私。

 エルミナーゼさんによる3日に渡る対人戦闘修行は見事功を奏し、私は見事に対人戦闘Sスキルと対人直観Sスキルをゲットすることに成功していた。


「セーヌ」


 ホウコさんが私に声をかけてきた。


「これ、前祝いってわけじゃないけど。健闘を祈って」

「こんな……また頂いてしまってもよろしいのですか?」

「良いのよ。ギルド受付である貴方がセーフガルドの代表として行くのだもの。前と違って大した額じゃないわ。負けてしまっても、どうせならサウスホーヘンの観光でもしてきなさいな。お友達も一緒に行くんでしょう?」


 そう。私の付添としてエルミナーゼさんが、そして観戦目的でミサオさんが一緒にくることになっている。本当はリエリーさんも一緒にと思ったのだが、例の贋作の作成者捜索依頼がまだ終わっていないらしく、忙しくしているリエリーさんを見て誘うのを思いとどまったのだ。


「それでは……有り難く頂戴致します」


 ぺこりとお辞儀してから金一封を受け取った。




   ∬




 早朝から馬車に揺られ南へ向かうこと3時間。

 ついに私達は水の港砦――サウスホーヘンへとたどり着いた。


 途中、ミサオさんから乗り物酔いの薬を貰った事もあり、私達3人は乗り物酔いに負けることなくサウスホーヘンの地を踏みしめることが出来ている。


 サウスホーヘン。広い広い港町を囲むように、大きな囲いが建てられた港街。

 城――そう表現しても良いほどの圧倒的な大きさの壁に囲まれた港町は、中央大陸各方からの商人などで賑わう交易の街でもあり、美しい水の街の風情を楽しむ観光名所でもあり、そして数々の催し物が行われる開放劇場を擁す芸術の街でもある。


 私、エルミナーゼさん、ミサオさんの3人は、馬車を降りたところで、まずは冒険者ギルドへと向かった。


「はい。間違いありませんね、闘技大会の招待状を確認させていただきました。出場者はセーヌさんでお間違いありませんね?」

「はい」


 サウスホーヘンのギルド受付嬢はセーフガルドと同じ制服に身を包んでいる。また、私に対応してくれている彼女は少しだけ幼気な印象だ。

 闘技大会の基本事項やルールなどの説明を受ける。


 ルールは基本的に3つだ。

 ・相手を殺してはならない。

 ・四肢欠損や致命傷は避け、寸止めをする。

 ・開放劇場から外にでたら負け


「それではこちらへ最終確認のサインをよろしくお願いします」


 言われ、私は丁寧に自分の名前を記した。


「はい。受付はこれで終了となります。開放劇場での試合開始まであと1時間ほどです。急いで会場へ向かってくださいね」

「はい。ありがとうございました」


 一礼して、私は冒険者ギルドを後にした。

 ギルドを出ると、ミサオさんとエルミナーゼさんの二人が待っていた。


「セーヌさん。出場選手登録は終わったのですか?」


 ミサオさんが笑顔で聞いてくる。


「はい。抜かりなく」

「それでは早速、開放劇場へ向かうとしましょう」


 何度かここサウスホーヘンに赴いた事があるというエルミナーゼさんに促され、私達は開放劇場へと向かった。

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