19 闘技大会の推薦状
囚われの少女達を救出して1週間。
私は新米冒険者として、そして新人ギルド受付としての日々を抜かることなく過ごしていた。
あれから私とリエリーさんの二人は晴れてDランクに昇格。
中級冒険者となった。
それから私はと言えば、草原スライム討伐依頼を2回受けた。
今度はリエリーさんと一緒ではない。一人でも依頼をしっかりとこなせると確認したかった。
見事。草原スライム討伐依頼は2度共に大成功。
セーフガルド近くの草原に生息する草原スライムは完全に一層されたと言ってもいいだろう。
暫くの間は、草原スライム討伐依頼が発生することはないだろう。
またギルド業務では、国宝クラス! と自負する取得アイテム鑑定依頼があった。
しかし、私の鑑定Sではどうやっても等級値700程度のアイテムでしかなく、残念ながらギルド規定に則り、中程度の額での買取しかできないアイテムが持ち込まれた。
本物であれば等級値1000は絶対にくだらないアイテムなので贋作だろう。
【即帝領の大太刀の贋作】。
セーフガルド東方にある遺跡――即帝領。そこに安置されているという大太刀のレプリカ。
等級値680。
この贋作の作成者に関して何故かギルドから調査依頼が出る自体となった。
リエリーさんはこれを喜んで受諾したようだが、いまだ調査結果は出ていないようだ。
そして、エルミナーゼさんがギルドへとやってきた。
「こんにちはセーヌさん」
「はい。今日はどのようなご用件でしょう?」
先日の救出劇の達成料200エイダと、ギルドからの特別報酬400エイダは既に私達3人で清算が終わっている。均等に200エイダずつを分け合ったのだ。
だからエルミナーゼさんに用があるとすれば先日の件ではないだろう。
「どうも冒険者ギルドから呼び出しがあったようなのですが……。セーヌさんはご存知ありませんか?」
「いいえ……。確認してみます」
左手で項をさすりながら、私はホウコさんへと確認に向かった。
「ホウコさん。エルミナーゼさんがお越しなのですが……」
「あぁ。例の件ね。これを渡しておいてくれる?」
「はい……」
ホウコさんが赤い蝋印の押された大きめの茶封筒を渡してくる。
受け取って、私はエルミナーゼさんのところへと舞い戻った。
「エルミナーゼさん。こちらをお渡しするようにとのことでした」
「……?」
疑念を抱くような目つきとなったエルミナーゼさんが受け取った封筒を開封していく。
そして中に入っている書状を確認して、エルミナーゼさんがぽつりと呟いた。
「……なるほど。闘技大会の推薦状ですか……」
「闘技大会ですか……?」
首を少しだけ傾げると私は聞いた。
「そうです。どうやら先日の誘拐騒動解決の武勲が認められたとかなんとか。功労者を闘技大会に招待したいとのことです……」
「それは……おめでとうございます?」
「……」
エルミナーゼさんは私の祝福にも言葉を返さない。
そうして暫く考え込むと、口を開いた。
「セーヌさん。失礼ですが鑑定させて頂いても……?」
「はい。構いませんが」
そうして鑑定が発動されたのだろう。
エルミナーゼさんはまた暫し黙り込んだ。そして、
「セーヌさん……私に代わり、この闘技大会に出てみませんか?」
「はい……?」
私は眉間に皺を寄せるようにして疑問をそのまま口にする。
「この推薦状には推薦者の名前が書かれていませんでした。加えて、これは先日の誘拐事件の解決者に向けての招待状です。私が指名されているというわけではない。ですから……」
「そうなのですか……ですが私に闘技大会に出る腕があるとは思えませんが……」
「それは謙遜でしょう。この短期間でまさか特級大剣術を身に着けているとは思いもよりませんでした。しかも私を超えるSランクを獲得している。これだけのスキルがあれば申し分ないでしょう。私が太鼓判を押しますよ」
「はぁ……ですが、私はまだ剣を取って1ヶ月も経っていません。それに先日の依頼でも満足に対人戦闘を行えませんでしたから、対人戦闘スキルがCランクしかありません」
私は「とてもとても闘技大会など……」と続けると、エルミナーゼさんがにやりと笑った。
「であれば、私が闘技大会までに対人戦闘についてお教えしましょう。それが交換条件ということでどうですか?」
「ぐっ……」
エルミナーゼさんにご教授願おうと思っていた対人戦闘に関して、先手を打たれてしまった私。
闘技大会などどう考えても分不相応だ。しかし対人戦闘Sを取得するため、また対人戦闘に慣れる為にはかなり良い案件なのではないだろうか……?
私は……。
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