18 依頼達成の報告
私達3人は捕縛した2人、そして救出した3人の女の子を連れ立ってギルド会館へと来た。
心配してギルドへと集まっていたらしき、最初の女の子の両親が女の子を見つけた。
女の子も母親と父親がいることに気付いたらしい。
「ママー!」
「アリナ……!」
アリナと呼ばれた女の子がお母さんの胸に飛び込んでいく。
「良かった……本当に良かった……!」
お母さんが泣きながらそう呟く。
「貴方方が救出してくださったのですね……どうも本当にありがとうございました……! こちら依頼の達成証になります……」
全身が血液らしきもので汚れたエルミナーゼさんをパーティのリーダーと見込んだらしき父親が、エルミナーゼさんに依頼達成証を渡した。
「頂戴します」
エルミナーゼさんはそれを受け取ると、ギルドマスターのホウコさんに手渡して言った。
「投降した男を2名確保しています。街の衛兵への連絡は街の入り口で済ませてきましたから、衛兵たちが来たら詳細をお話するという形で構いませんか?」
「えぇ……それは構わないのだけれど……」
ホウコさんはちらりと私やリエリーさんの方を見た。
きっと心配してくれているのだろう。
「お預かりした二人は両方とも無事です。二人共自分の役割をきっちりこなしていました。上級冒険者として、二人の中級への昇格を進言します」
エルミナーゼさんが私達二人の働きを称賛した。
けれど本当にそうだろうか? 私は基本的に時間稼ぎをしただけに過ぎない。
加えて斧槍使いの男が何故か怯えて投降してきたのだ。
おそらくは時間稼ぎが上手く行ったことで諦めたのだろうが……。
「そんな……中級冒険者になんて……! 私はまだまだですので……」
リエリーさんが辞退するかのように謙遜するが、エルミナーゼさんは首を横に振った。
「いいえ。リエリーさんの機転はお見事でした。即座に囚われている少女たちのいる部屋を見つけ出すだけでなく、そもそもアジトを見つけた手柄も見逃せたものではありません。中級に上がるに値する働きでした」
エルミナ―ゼさんはそう言って、私達二人の中級昇格の進言を譲らないようだ。
その眼は確固たる意志が宿っているように輝いていた。
「中級冒険者ですか……」
私がそうぽつりと呟くと、リエリーさんが質問した。
「セーヌさん。仮にこれで私達がDランク冒険者に昇格したとしてです。Eランク依頼を受けることは可能なのですよね? 報酬にマイナスの色が付くなんてことはありませんよね?」
リエリーさんの質問に、
「はい。そのような事はありません。例えSランク冒険者だったとしても、受ける依頼は自由ですので……」
そう答えると、リエリーさんはほっと胸を撫で下ろした。
それから街の衛兵団が到着。
私達3人と投降した男2人が事情聴取を受けた。
その殆どをリエリーさんが説明してくれたため、私が説明したのは少しだけだ。
しかし、男が投降してきた理由は分からなかったので、斧槍使いの男に直接聞いてほしいと頼んだ。
そうして衛兵の聴取を終えると、私は普段通りにギルド業務へ復帰した。
もう少しでギルド業務が終わる時間だ。
私は水晶を取り出すと冒険者カードをいつものように当てた。
【対人戦闘C】。
対人戦闘を上手に的確にこなすことができるようになる。
斧槍使いとの戦いを通して獲得したものだろう。初めての対人経験が命のやり取りだったので緊張したが、なんとかこなすことができた。Cランクなのは心許ないので、誰かに対人戦闘を教えてもらうことにしよう。
【威圧D】。
人や動物を威圧することができる。相手は怯む。
威圧……もしかして、斧槍使いの男を睨みつけた時に取得したものかも知れない。
このスキルの効果で男は臆して投降を選択したのか、と私は納得した。
やはり未知のスキルを侮ってはいけない。
【捕縛術B】。
人や物を縄で縛ることができるようになる。
これは恐らく斧槍使いの男を捕縛したときに得られたスキルだ。
対人戦闘と威圧同様に、誰かに教わったわけではないので、新しく取得してBランクになっているのだろう。リエリーさん辺りはきっと捕縛術にも詳しい。あとで教えて貰うのもいいかもしれない。
【中級冒険者S】。
中級冒険者としての経験を飛躍的に成熟させる。
本日得たスキルはこの4つだ。
残念ながら研修生の効果が発揮されていないスキルが3つもある。
幸い中級冒険者のスキルはエルミナーゼさんに指示を仰いだ結果か、研修生Sの効果が発揮されSランクを獲得出来ている。今後、依頼をこなしていくに当たり最重要スキルといって過言ではないこのスキルをSで獲得できたことは僥倖としか言えない。
この調子で、明日もまた地道に頑張っていこうっ!
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