15 誘拐犯のアジト
「あそこです!」
リエリーさんの先導のもと、誘拐犯のアジトへとやってきた。
セーフガルド西の森――その目前にあって、豪華な山小屋のような外観をしている。
エルミナーゼさん、リエリーさん、そして私の3人はその山小屋が見える森の陰に潜んでいた。
「この感じだと5~6人は住めそうな感じですね」
私がそう感想を言うと、
「確かにそうですね。私の調査では最低でも3人の男性が交代で見張りをしているようです。中に正確に何人いるかは分かっていません。調査不足です。申し訳ありません……」
リエリーさんが悔しそうにそう漏らした。
しかし誘拐犯のアジトを見つけたのだから、低ランクのEランク冒険者としては大金星だ。
「そんなことはありませんよ。さすがは名探偵です」
私がそう言うと、リエリーさんは、「いえ……」と照れ隠しをするかのように魔女帽子を深く被った。
するとアジトから男が一人出てきた。
男は武器を携えて門番でもするかのように、アジトの玄関に立つ。
武器は斧槍だ。
「不味いですね……やはり敵は対人戦闘を想定に入れているようです」
リエリーさんが怯えた表情で言う。私もごくりと唾を飲んだ。
二人共に対人戦闘の経験はない。そのことは既にここに来る最中にエルミナーゼさんに話している。そもそもBランクに相当する依頼をこなせるだけの実力はないのだ。
「私達はどうすれば……?」
私はエルミナーゼさんに指示を仰いだ。
「セーヌさん。まずは鑑定を彼だけにできますか?」
「はい。可能だと思うのでやってみます」
エルミナーゼさんに言われるがまま、私は門番の男に対して鑑定を仕掛けた。
鑑定妨害を受けることなく、あっさりと鑑定結果が出る。
【人族、男性】。
【中級斧槍術C】、【初級炎魔法E】、【中級冒険者C】、【元素感知B】、【元素操作F】etc……。
私はすぐに鑑定結果をエルミナーゼさんへと伝える。
「大したことはありませんね。リエリーさんお願いできませんか?」
「え……! 私ですか!?」
リエリーさんはご指名に驚きを隠せなかったようで、声を荒げる。
「敵をおびき出して逃げ回るだけで結構です」
「ま、待ってください! 私には対人戦闘は無理ですよ。ましてや相手は中級冒険者で中級斧槍術の使い手です。中級片手剣術を身に着けたばかりの私では相手になりません……! もし捕まったらと思うとぞっとしてしまいました……」
リエリーさんは身震いをして、自分には負担が大きすぎる事を訴える。
「そうですか……ならばセーヌさん?」
「私ですか……?」
言われ、私もリエリーさん同様に手に震えが走る。
しかし逃げるわけにはいかない。私は冒険者だ。
相手は中級冒険者とはいえ、所持スキルは分かっている。
相手が持っている戦闘術は中級の斧槍術と初級炎魔法のみだ。
見習い同然とはいえ、一応特級大剣術を持っている私には荷が勝ちすぎていると言えるわけでもないかもしれない。
「やってみます」
震えを抑え込みながらそう答えると、エルミナーゼさんがゆっくりと頷いた。
それから作戦の詳細をエルミナーゼさんが私達二人に説明する。
詳細はこうだ。
まず私が斧槍使いの男を挑発して引き離す。
それからエルミナーゼさんとリエリーさんがアジト内部に突入。
エルミナーゼさんが残りの敵を全て引き受ける。
リエリーさんは必然的に人質となっている誘拐された少女達の救出に当たることとなった。
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