13 迷子の捜索依頼
最低ランクのFランク冒険者だった私。
しかし昨日の依頼達成報告を以って、リエリーさんと一緒にEランク冒険者へと格上げとなった。
その理由は草原スライムに紛れて倒した複数の中に、厄介な主イノシシとして知られるワイルドワイルドボアが混じっていたからだ。
ワイルドワイルドボアにはEランクの討伐依頼が出されていた。
そうして自動的にEランク冒険者向け依頼を達成したことで、私達は昇格となった。
「おめでとうセーヌ」
「はい。ありがとうございます」
私が最低ランク冒険者を脱したのはギルド内で有名になっていたようで、同僚のギルド受付からお祝いの言葉を貰う。
「たった数週間で最低ランクを脱するなんてさすがはセーヌね」
ホウコさんが「これからも頑張りなさい」と昇格祝いだと金一封を私に渡してきた。
「こんな。頂いても良いのでしょうか?」
「構わないわよ。可愛い後輩の新たな門出を祝うようなものよ。Eランクからは本格的な依頼が増えてくるんだから、装備の更新にでも使いなさいな」
「はい。ありがたく頂戴させて頂きます」
ぺこりとお辞儀をして、恐らくはホウコさんのポケットマネーらしき金一封を頂戴した。
「装備の更新か……」
とは言っても、自作の大剣はまだ誂えたばかり。
他に装備と言えるような装備は鉄製の胸当てくらいのものだ。
ブーツは履き慣れたものを使っているし特別問題はない。
布製の手甲を鉄製や革製の取り回しが良いものに変えるのはいいかもしれないと思った。
「すみません! これをよろしくお願いします!」
そんなことを考えていると、一人の女性が受付へとやってきて依頼票を急ぐように手渡してきた。女性は酷く焦っている様子だ。
「はい。新規の依頼ですか。少々お待ち下さい」
「娘が急にいなくなってしまって……少し家を留守にしていただけなんですが……」
「なるほど。娘さんの捜索のご依頼ですね。E~Dランク相当の緊急依頼のため、依頼達成報酬として200エイダがかかりますがよろしいですか?」
「はい!」
女性は私に言われ、すぐに200エイダを渡してきた。
200エイダといえば、ここセーフガルドの平均月収のおよそ1/8程度にはなる結構な大金だ。しかし娘さんの為ならばそのくらいは惜しくはないのだろう。
その後、私は家の中を確認はしたか? 街の衛兵に訪ねたか? 娘さんの特徴は? などの基本的確認事項を母親から聞き出すと、依頼票にまとめた。
「それでは依頼は受け付けましたので、達成までお待ち下さい」
「はい……」
母親は心配そうな面持ちで去っていく。
私は依頼票を張り出すために掲示板へと向かった。
そして、掲示板に依頼票を張り出すと、横にある銅製の手持ちベルを手に取る。
そしてベルをからんからんと数度鳴らしてから叫んだ。
「E~Dランク相当の緊急依頼を受付けました! 詳細は掲示板に張り出されましたので、冒険者の皆さんはご確認ください!」
私の声がギルド会館内に響くと、冒険者たちが続々と掲示板に集まり始めた。
その中にはリエリーさんの姿もあった。
名探偵Sスキルを持つリエリーさんには確かにうってつけの迷子捜索依頼かも知れない。
リエリーさん達冒険者は迷子の特徴などの詳細をメモに取ると去っていく。
「私も受けてみたかったのですが……」
今日は多くのギルド受付が休みの日だ。
私まで冒険者として出払ってしまうと、あと残るのはホウコさんともう一人だけになってしまう。だから私は、冒険者としては初めて遭遇した緊急依頼を受けず、ギルド受付業務に従事することにした。
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