第4話

「それでは行きましょうかな」

老人がそう言うと、三人の屈強な男たちが北川のまわりを囲んだ。

そのうちの二人に背中を軽く押された。

力はさして強くはないのだが、拒否することを許さない無言の圧力がそこにあった。

まるでやばい連中にどこかへ連れ去られているかのような感覚を、北川は覚えた。

心なしか不安が頭をよぎったが、考える間もなく北川は車まで連れていかれ、そのまま押し込まれた。

運転席にはやはりいかつい男が座っている。

三人のうち一人が助手席に座り、後部座席に北川を真ん中にして挟むように二人の男が座る。

ますます怪しい連中にどこか怪しいところに連行されているみたいだ。

北川がそんなことを考えていると、ドアが閉められ車が走りだした。

車は北川がやって来た道へと進んだ。

――これは、もしかしたら。

ここに来る途中で見た奇妙な建物。

ひょっとしたらあの中に村の名物とやらがあるのか。

北川の不安は好奇心へと変わった。

いったいあの建物はなんなのか。

あの中にはなにがあると言うのか。

そんなことを考えていると、車がその建物の前に停まった。

四人の男たちが車から降り、北川も降りるようにうながされた。

四人に囲まれながら、建物の入り口の前に立つ。

一人の男がやけにバカでかく古い鍵を取り出した。

その鍵は一部が錆びていた。

そして一つしかない鉄の扉を開けた。

――これは……。

コンクリートの箱のような建造物の中には、鉄の箱があった。

その延床は一軒家くらいだが、高さがある。

壁しか見えないが、その壁は全て鉄製だ。

物々しいにもほどがある。

鉄の壁の建物だけでも、超強化した刑務所のような印象を受けるが、この鉄の箱は四方と上を、コンクリートで囲まれているのだ。

四人の男と北川は、コンクリートと鉄の壁の間を歩いた。

ところどころコンクリートの壁の内側に灯りがある。

鉄の扉も閉められ、日の光は一切入ってこない。

裏に回ると、少し壁と同化していたが、見るからに頑丈そうな鉄の扉が一つあった。

コンクリートの壁と同じで、こちらも鉄の扉一つだけで、窓とかそういったものはないようだ。

先ほどとは違う男が別のこれまた大きくて古い鍵を取り出した。

扉が開けられる。

中は入り口の近くに小さく弱弱しい明かりが一つあるだけだ。

中は薄暗く奥は見えない。

男たちにうながされて、北川は中に入った。

すると鉄の扉が閉められた。

おまけに鍵を閉める音が聞こえた。

北川は慌てて扉を開けようとしたが、扉はびくともしなかった。

「おい、開けろ。いったいどういうつもりだ」

北川は激しく扉を叩きながら叫んだが、外からはなんの反応もない。

「おい、いい加減にしろ。ここを開けろ。開けろ。開けろったら!」

再び扉を何度も叩き、声の限りに叫ぶ。

しかしやはり全く反応がなかった。

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