第2話

そのまま進むと、開けたところに出た。

山の中の小さな集落。

そんな感じだ。

何軒かの家と、田畑が見える。

――今日はここにするか。

田舎の人だとだましやすい、いや話しやすいかもしれない。

もしかしたら商品を買ってくれるかもだ。

川北は最初の家の前に車を停めた。

古いが他の家と比べると、ずいぶんと大きく立派な家だ。

ここの地主の家と言ったところだろうか。

思わず期待してしまう。

玄関に行き、呼び鈴を鳴らした。

返事がない。

留守なのだろうか。

もう一度呼び鈴を鳴らす。

すると「はい」と言う声とともに出てきた。

七十代くらいだろうか。落ち着いた感じで白いあごひげの痩せた老人が出てきた。

老人は怪訝そうな顔で川北をじろじろと見ていたが、やがて言った。

「どちら様ですかの」

川北は言った。

「いきなりすみません。実はあなたのような方に是非とも使ってもらいたい商品があるのですが」

「商品?」

「ええ。とってもいい商品です。買わないと間違いなく後悔しますよ」

川北がパンフレットを取り出して商品の説明をしようとすると、老人が言った。

「それでいくらですかな。その商品と言うやつは」

商品の説明をする前に値段を聞かれるとは思ってもいなかったので、川北は少し慌てて言った。

「商品にはグレードがありまして、一番安いものだと五十五万円、一番高いものだと九十万円になります。これでも高性能ですので、決して高くはないですよ。一生使えますし、お買い得ですよ」

「そうかい。それで、おたくの血液型はなんですかいの」

「えっ?」

「血液型を聞いておるんだが。自分の血液型くらい、知っておるだろう」

なぜ血液型を初対面の老人に聞かれなければならないのか川北にはさっぱりわからなかったが、お客になるかもしれない人の質問を無視するわけにはいかない。

「えっと、私はA型ですが」

老人の目が少しきつくなり、眼力が増したように見えた。

そして少し笑った。

「そうですかそうですか。それはそれは。そんなことならその商品、買ってもいいかもしれないですな」

まだ商品の説明をしてないにもかかわらず、買ってもいいかもしれないとは。

それに川北の血液型がA型であることに、この老人は間違いなく反応しているのだ。

いったいこれはどういうことなのか。

どういった関連性があるのか。

川北がなにも返さないでいると老人が言った。

「ここで少し待っていてくだされ」

老人は奥に入った。

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