番外話 級友≪クラスメイト≫
砂漠から
どこまでも暗く、底の見えない石階段が続く。何百年も前に作られた、砂に埋もれていたと思われる地下深く。
もう不安になってくるほど降りた頃、岩でも金属でもない謎の素材でできた、継ぎ目のない広い空間が現れる。奥は暗闇に包まれているが、床と同じ素材の左右等間隔に並ぶ16本の柱と、石造りの建築様式を取り込んだ建物が、鈍く薄く 緑色の光を発し佇んでいた。そのおかげで夜でもぼんやり明るく、時間の感覚が麻痺する。
昔、地殻変動によって巨大な空間が作られた。過去未発見の遺跡の上に、今の街が作られ、人々が住み始めた。この街に住んでいる人間に それを知るものは誰一人としていない。
酒場のようなカウンターからは 今釣り上げたばかりのような魚がさばかれ、調理されている。色とりどりの飲み物をガラス容器に注ぎ、ウエイターは数人が
…全員異界人だ。
そのうちの一人、高身長のウェーブがかった髪の男が 眼鏡をかけた男にひそひそと耳打ちで話しかける。
「先生、…タムラに貸していた人形の糸が、不自然に切れました。恐らくは…銀装の攻撃でしょう。状況から見るに…タムラは…」
先生と呼ばれる若い男は 最後まで報告を聞き終えると涙を浮かべ、
「そっか…悲しいね…」
先生が席を立ち、中央の目立つ踊り場に立つと 声を張って皆に知らせる。
「みんな聞いてくれ!悲しいお知らせだ…。タムラ君が今日、
空気を含んだふわふわツインテールの女が、濃い紅を塗った口を歪ませ、冗談交じりにほくそ笑む。
「アイツ死んだの?ウケる。自分の思い通りにならなかったらキレる奴じゃん。」
それを耳にすると、すかさず短髪の真面目そうな男が注意する
「サオトメアリスさん!それは言い過ぎですよ、みんな悲しいときにそんなこと言っちゃダメです!時と場合を選んで…」
「うっせぇな委員長!ウチを毎回フルネームで呼ぶんじゃねぇよ!うざってぇ!」
アリスと呼ばれる女性は燃え上がるようにブチギレた。
周囲の人間は思い思いに騒ぎ出す。
久しぶりの仲間割れにテンションが上がる者、ひょうきんな者
失った友に思いを馳せる者
「おっ喧嘩かぁ?ヤれヤれー!
「意味が違うだろ、弔い合戦は仲間内でやるもんじゃねぇよ」
「ヌぅ!?死者の為に戦い合って、血を捧げる儀式とは違うのか?」
「ヤダ!発想が蛮族!」
「タムラ…
ガヤガヤと騒がしくなる神殿内。先生が一言話すと、全員がシンと黙った。
「
広い部屋の中で歓声が上がる。
「やれやれ…僕のクラスは賑やかで退屈しないね。」
授業が無いことを喜ぶ他の者達をよそに、先生へ 硬い決意を持って近寄る男が一人。
「先生、僕に
―――ここは『異世界教室』。
教会指定『要注意異界人コミュニティ』の一つ。
「…いいよ。教えてあげる。」
番外話 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます