〜桜和 椿(50)〜

 柳さんは問うた。お店でも、ここでも。それからずっと考えていた。いや、昨日家を出た時から考えてたんだ。これからどうしていけばいいのだろう。って。ずっと前から答えは出てた。


『なりたくないとも今まで言わなかったじゃないか。そう思っていたなら、何故私達に言わなかったんだ!』


 私は、________________________________


「私は、両親と向き合わなきゃいけない。分かっているんです・・・。本当はずっと・・・」

「桜和さん・・・」

「・・・。」

「分かっているのに、どうしてやらない?」

「ちょっ、と・・・。柳さんそんな言い方・・・」

「出来ないから・・・」

「え?」

が出来ないの。私には覚悟が足りない・・・」

「なぜ出来ない?」

「・・・。」

「椿さん・・・」

「・・・?」

「ずっと気になっていたことがあるんだ」

「なんですか?」

「前になんで学校をサボることがあるのか聞いた時、君ははぐらかした」



『だからこそ気になるんだ。なんで、学校に行かない時があるのか』


『私さ、天才って呼ばれてるんだ。周りの人から』


『全く勉強せずに学年一位を維持し続けるなんて出来る訳ないのにさ』



「今、もう一度聞いてもいい?どうして、学校をサボったりしてたのか」

 以前話した時、福寿さんの質問に対して外れた答えを返したことがあった。あの時の私は認めたくなかったんだろう。そうやってずっと目を逸らして生きてきたんだ。

「ずっと気になっていた。君は初めて会った時、まっすぐ臆せず意見を言う子だったから、そうゆう子なんだと思ったんだ。でも、医者になる事を期待されて、自分の夢を叶えられないと言っていた君に・・・。とても、違和感を感じた。だから、思っていたなんでご両親には自分の思いを言うことができないのか・・・」

「・・・・。」

「ごめん・・・。こんな追い詰めるような事言って・・・」

「いえ、・・・」



 僕の質問に椿さんは沈黙した。タイミングを間違えてしまったと思っていると・・・

「幼い頃から、両親は仕事ばかりで家族で過ごした思い出なんてほとんどありません。あるのはいつも、出される課題の評価と、医者になるために頑張りなさいと言われる時が唯一のやり取りでした」

 椿さんは語り始めた。誰にも触れさせてこなかった心の内を____________

「行事も、学校であったことも聞いてもらった記憶がありません。いつも忙しそうな両親になんて声を掛けたらいいのか、成長するにつれてどんどん分からなくなっていきました。最初は話が聞いて欲しくてしょうがなかったんです。でも、中学校に上がる頃にはそんな思いは薄れて逆にムカつくようになってきたんです。私の気持ちは知ろうともしない癖に自分達の要望は簡単に口にする。そんなところが嫌で嫌でしょうがなくて、そんな両親への反抗心で学校をサボるようになりました」

 彼女の口から想いがこぼれ続ける。彼女の心に触れた感触がした。

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