〜桜和 椿(47)〜

「どうして・・ですか・・・?」

「とても苦しいし、簡単な事じゃない。私はお父さん達が好きだし、最後の最後まで、きっと迷う。それでも、理解してもらえないなら、受け入れてもらえないなら。私は自分のやりたい道を生きたい。感謝はしている産んでくれたから、夢を持つことが出来た。一生かけて挑戦したいものに出会えた。親の思いに応えたい気持ちもあるけど。人生だけは自分の道を歩きたい。だって私の人生は私のものだから。私の夢は絶対に叶えたい夢だから。そこに挑戦する道で生きていたい。そう思うの」

「・・・・!」


『その選択の責任はその人自身にあります。残酷かもしれませんが、だからこそ、人生はその人自身の物なんです。』


 彼女が言った事。以前、白君が言っていた。自分で選択しても、流されて選択しても、その選択はその人自身が選んだ道。その責任はその人にあって、だからこそ、その人生はその人自信の物なのだと。自分が生きたい道に進みたいなら、たとえ傷ついても進むしかない。椿さんにが分かった。

「僕も良いかな?僕も二人の言っていることは分かるんだ。私も同じ立場ならそうする。というか、した」

「えっ。したって・・・・」

「私の家も医者ではないけど、学歴主義で。良い学歴と、良い経歴を求められる家だった。兄弟がいるのだけれど、全員優秀。学校も、会社も有名なところに行っている。私も、親の言う通りに生きてきた。親の言う道を。高い成績で、難関と言われる大学に入学し、卒業した。会社も誰もが一度は聞いたことのある大手に入社し、働いていた。名刺を見せれば、誰もがだと僕を羨んだよ。努力が目に見えるのも、凄いと言われるのも嫌ではなかった。やりがいはあったし、評価をもらえるのも嬉しかった。手を抜く事はなかったし、プライドもあったよ。それでも、どれだけの評価を受けても、褒められても、羨ましがられても、努力が報われても、満たされる事はなかった。理由はずっと分かっていた。やりたいことがあったから、自分の店を持ちたいていう夢が」

 このオーナーさんは椿さんと似てる。機体の掛けられ方も、歩んできた道も。この場の全員が彼の言葉に集中していた。実際に経験している人の話。


「ある時から、自分の夢から目を背けられなくなってね。このまま、流されたまま挑戦もせずに終えたくないと思うようになったんだ。それからすぐに、会社を辞めることと、店をオープンする準備をした。当然、両親も友人も上司も同僚もみんな反対したよ。今からなんて無理だ。できる訳ない。せっかく、恵まれた場所にいるのにそれを手放すなんて勿体無い。って、考え直せ。って。誰も受け入れてはくれなかったよ。当然かもしれない。その時はもう僕は三十代後半。現実が見れていないと思われていたんだろう。それでも諦め切れなかった僕はそれら全ての人間関係を切ってお店を開く事を決意したんだ」



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