〜桜和 椿(46)〜
「とにかく、落ち着いて話そう。二人とも」
「真奈さん・・。でもっ!」
「二人の気持ちは分かるよ。本当にごめんなさい・・・」
真奈さんが仲裁に入った事によって喧嘩になりそうな状況は一先ず回避された。だが、私も福寿さんも納得した訳ではなかった。
「もぉ、ほんとにっ!柳君!どうして君はいつもそういう言い方しかできないのさっ!!」
「・・・・。」
「本当に口下手というか何というか・・・。二人とも、本当にごめんっ!悪い人ではないの。物言いはアレだけどっ!」
真奈さんは何度も謝ってくれて、柳さんを横目に睨んでいる。
「ほら、柳君も謝るっ!」
「別に間違ったことは、イッテナイ・・・」
「正しくてもメンタル沈んでいる人に向かって、縁切ればいいとか簡単にいうもんじゃないでしょっ!しっかり考えなきゃいけないことなんだからっ!二人が怒るのも当然だよっ!」
「でも、・・・」
「何か言った?」
「ゴメン・・・」
「あっ、いえ、僕も、そのすみません。責め立てるようなことして・・・」
「私も熱くなって、勢いで言っちゃってごめんなさい・・・」
真奈さんのおかげで荒れていた空気が元に戻っていく。真奈さん自身の明るさが空気を中和した。その場の空気をいい方向へ変えることのできる人。真奈さんは常に周りに気を配っていて、一緒にいるこっちも明るくなれる。真奈さんはやはり凄い。
「はぁ・・・。本当に、もう・・・。でもね二人には悪いけど、柳君の言うこともわかるんだ。伝え方はともかく・・・」
「え?」
「私は直接椿ちゃんに会ってないけど、オーナーと柳君に話を聞いて思ったの。私はお父さん達と仲は良いし、たくさん私の話を聞いてくれる。私のやりたいことも応援してくれているから、より頑張りたいって思える。でも、今回のことを聞いて私が椿ちゃんの立場だったらって考えた。完全に理解してはいないかもしれないけど、辛いだろうなと思った。自分の生きたい道と違う道に期待をかけられることも、生きたい道を進めないことも。ましてや、否定されたら・・・。とても苦しいだろうなって・・・」
真奈さんの話を聞いて考える。私は特に、やりたい事も、やりたくない事も無く。どちらかと言えば流されて生きてきた。それでも、両親にやりたい事を否定されたことは無いし、これをやりなさいと言われた事もない。これをしたいと言えば、それなら頑張りなさい!と背中を押されていた。身近な人に自分の道を肯定してもらえる事は当たり前の事ではなく、とても幸せな事なのだ気付く。
「そこまで考えて思ったの。もし、私が椿ちゃんだったらどうするだろうって。それでね、きっと私は柳君が言ったように親と縁を切るなって思ったの」
「え?」
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