〜桜和 椿(44)〜

 目の前の挙動不審な男性に話しかけると、その男性は私の顔を見て固まった。

 どこかで会った事があるだろうか・・・?

「えっと、・・何か?」

「あっ・・。いえ、なんでもありません・・・」

「・・・?」

「あっ、えっと入りますね。すみません・・・」

「はい・・・」

 なんか、変な時間だったな・・・。男の人と一緒にお店に入った。

「いらっしゃいませ。こんにちは」

「心助さ________________」

「あのすみません。ここに女子高校生が来ませんでしたか?」

「えっ・・・」

「え?」

「・・・・。」

 店内には、心助さんと真奈さん、もう一人のバイトの人と私と私と一緒に入って来た男性だけ。その男性の言葉でその場が静まり返る。

「えっ、と・・・。女子高校生というのは?」

「えっと、桜和椿、という子です・・・」

「?!」

「失礼ですが、貴方は?」

「福寿と言います」

「椿さんとはどう言った関係で?」

「知り合い・・です」

 心助さんの質問に男性・・・。福寿さんは答えていく。

「なんで彼女を探しているんですか?」

「椿さんがいなくなったんです」

「え?!」

「!」

「!・・・・」

「それって・・・」

「いなくなったってどうゆう事ですか?!」

「・・・まぁ、落ち着いて。すみませんが知り合いだけでは、お教えする事はできません」

「お願いします!早くしないと・・・」

「ちょっと待ってください!どうゆうことか説明してください!」

「君は・・・」

「桜和さんの友達です!」

「・・・・・家出をしたみたいで、探しても何処にもいないんだ・・・。今は行きそうな場所を当たっている所で・・・」

 私が詰め寄ると、福寿さんは渋々といった様子で口を開いた。

「家出・・・。もしかして、昨日から?」

「うん・・・。お願いします。何か知っている事があれば何でもいいです。教えてください!」

 福寿さんは必死に頭を下げた。その必死さにこの人が純粋に桜和さんを心配しているのが滲み出ていた。それでも、怪しさは拭えない。

「それなら、知り合いではなくちゃんと関係性を示してください」

「皆さんは、椿さんから僕のことを聞いていますか?」

「いえ、貴方のような知り合いがいるとは聞いた事がありませんが・・・」

「なら、言えません。彼女が貴方たちに言っていないことを僕が言う訳にはいきません。信じてもらえないことはよく分かっているつもりです。でも、お願いします。早く探さないといけないんです」

「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・。」

 どうしたものかと、全員が考えていると_______________


「いいんじゃないですか。話しても」

「柳君・・・。でも・・・」

「本当に心配して探しているようだし、持っている情報も、自分のこと以外はしっかりしている。それに、この一人で何かできるとは思えない」

 柳さんは、鋭い視線で福寿さんを見ているものの協力する意見を出した。

「柳君。しかし、それで何かあったら・・・」

「そうだよ。この人だけじゃないかもしれないし・・・・」

「大丈夫。俺が責任を持って、この人と一緒に桜和を探すので」

「えっ?!」

「なので、オーナー。すみませんが、お店抜けてもいいですか?」

「はぁ、本当に君は・・・。分かったよ。頼むね」

「私も行きます!じっとしていられないので!」

 ただ待っている事なんてできない。行かないなんて選択肢はなかった。

「では、私達が知っている事を話しましょう」

「ありがとうございます」



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