〜桜和 椿(30)〜
目の前の挙動不審な男性に話しかけると、その男性は私の顔を見て固まった。
どこかで会った事があるだろうか・・・?
「えっと、・・何か?」
「あっ・・。いえ、なんでもありません・・・」
「・・・?」
「あっ、えっと入りますね。すみません・・・」
「はい・・・」
なんか、変な時間だったな・・・。男の人と一緒にお店に入る。
「いらっしゃいませ。こんにちは」
「心助さ________________」
「あのすみません。ここに女子高校生が来ませんでしたか?」
「えっ・・・」
「え?」
「・・・・。」
店内には、心助さんと真奈さん、もう一人のバイトの人と私と私と一緒に入って来た男性だけ。その男性の言葉でその場が静まり返る。
「えっ、と・・・。女子高校生というのは?」
「えっと、桜和椿、という子です・・・」
「?!」
「失礼ですが、貴方は?」
「福寿と言います」
「椿さんとはどう言った関係で?」
「知り合い・・です」
心助さんの質問に男性・・・。福寿さんは答えていく。
「なんで彼女を探しているんですか?」
「椿さんがいなくなったんです」
「え?!」
「!」
「!・・・・」
「それって・・・」
「いなくなったってどうゆう事ですか?!」
「・・・まぁ、落ち着いて。すみませんが知り合いだけでは、お教えする事はできません」
「お願いします!早くしないと・・・」
「ちょっと待ってください!どうゆうことか説明してください!」
「君は・・・」
「桜和さんの友達です!」
「・・・・・家出をしたみたいで、探しても何処にもいないんだ・・・。今は行きそうな場所を当たっている所で・・・」
私が詰め寄ると、福寿さんは渋々といった様子で口を開いた。
「家出・・・。もしかして、昨日から?」
「お願いしますっ何か知っている事があれば何でもいいです!教えてください!」
福寿さんは必死に頭を下げた。その必死さにこの人が純粋に桜和さんを心配しているのが滲み出ていた。それでも、怪しさは拭えない。
「それなら、知り合いではなくちゃんと関係性を示してください」
「皆さんは、椿さんから僕のことを聞いていますか?」
「いえ、貴方のような知り合いがいるとは聞いた事がありませんが・・・」
「なら、言えません。彼女が貴方たちに言っていないことを僕が言う訳にはいきません。信じてもらえないことはよく分かっているつもりです。でも、お願いします。早く探さないといけないんです」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
どうしたものかと、全員が考えていると_______________
「いいんじゃないですか。話しても」
「柳君・・・。でも・・・」
「本当に心配して探しているようだし、持っている情報も、自分のこと以外はしっかりしている。それに、この人一人で何かできるとは思えない」
柳さんは、鋭い視線で福寿さんを見ているものの協力するという意見を出した。
「柳君。しかし、それで何かあったら・・・」
「そうだよ。この人だけじゃないかもしれないし・・・・」
「大丈夫。俺が責任を持って、この人と一緒に桜和を探すので」
「えっ?!」
「なので、オーナー。すみませんが、お店抜けてもいいですか?」
「はぁ、本当に君は・・・。分かったよ。頼むね」
「私も行きます!じっとしていられないので!」
ただ待っている事なんてできない。行かないなんて選択肢はなかった。
「では、私達が知っている事を話しましょう」
「ありがとうございます」
「実は一時間半くらい前まで桜和さんがお店にいたんだよ」
「え?!」
「椿さんはどこへ?」
「何処に行ったのかは分からない・・・。ここで話をした後、お店を飛び出して行ってしまって、追いかけたけど見失ったんだ。ごめんね・・・」
「何を話したんですか?」
「家出をした事とその経緯についてだ」
「経緯っていうのは?」
「それは・・・。どうなんだろうなぁ・・・。言っていいものなのか・・」
「一緒に探すなら、知っておいた方がいいでしょう。知っているかいないかで対応も変わってくるでしょうし」
「そうか・・・。それもそうだね・・・。家出の原因は進路についてご両親と揉めたことが原因らしい・・・」
「進路・・・・」
「・・・・。」
進路について・・・。ずっと感じていた。桜和さんが触れられたくないと思っている部分。やはり昨日のあれから引きずって。あの後、そんな事が・・・。おそらく桜和さんのメンタルは____________。タイミングが悪すぎたのか・・・・。心配は募るばかりだ。
「その話をして、どうして椿さんは飛び出して行ったんですか?」
「えぇっと・・・。その話を聞いて少しね・・・。桜和さんは進路についてご両親とちゃんと話をしていなかったらしくてね。すれ違いが多かったみたいで。それも今回のことの原因の一つみたいなんだ。そのことについて話をしたんだ。その、柳君が・・・・」
「えっ?」
「何を言ったんですか?」
「しっかりと両親に意思表示をするべきだと言ったんだ。親が子供に向き合う事をしなければいけないのは確かだが、自分でも意思を示さなければ何も伝わらないと。」
「意思表示っていうのは?」
「桜和さんのご両親は桜和さんに医者になることを望んでいるそうなんだ。でも、彼女自身はそれを望んでいなくて。その意思を示すべきだと柳君は話したんだ」
やはり桜和さんは医者になるのが嫌だったのか。何となく分かっていたことだが、それがまさかこんなことになるなんて。
「親子でも伝えようとしなければ何も伝わらない。もし、伝えても理解してもらえないなら縁を切っても自分の意思を通せばいいと伝えた。」
「は?」
「な、何を言ってる_________________」
「なんてことを言うんだ!!!」
思わず口を挟み立ちあがろうとした時、隣に座っていた福寿さんが私よりも先にカウンター越しの柳さんに噛みついた。その顔は人を思う顔だ。人のことを考える事ができる人の顔だった。
「なんてことを言うんだよ!縁を切れとか、今気が沈んでいる人に・・・」
「でも、間違っていないだろう。伝えても受け入れてもらえるとは限らない。親だから子供の意思を必ず尊重してくれる訳じゃない。話してダメなら、決別して自分の道を進むか、今まで通り流されて生きるかだ。」
「だからって簡単にそんなこと言うものじゃない!ましてや、今冷静な判断ができないだろう時に・・・」
「そうです!そんな事、口にする物じゃないですよ!」
「ちょっと待って!二人とも落ち着いて!」
私達が柳さんに掴み掛からんばかりに詰め寄ると間に真奈さんが仲裁に入った。
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