〜桜和 椿(43)〜
僕は今、走っている。椿さんを探すために。椿さんの分岐点が近付いているとわかった二日後にすぐに分岐点が来てしまった。僕達は少し遅かったのだ。
数時間前_______________。
「っ!・・・・。」
「どうしたの?白君」
「桜和椿の気配が消えかかっています」
「え?!ど、どういうこと?!なんで・・・」
「・・・分岐点。」
「が、もう来たって事?」
「そのせいで魂が不安定になってしまっているのかと。その影響で彼女の気配が追いづらくなっています・・・。」
「そんな、こんな急に・・・」
「とにかく、貴方はすぐ桜和椿を探してください。私は、彼女の気配を追って教えるので。」
「う、うん。分かった!」
「では、現世に送ります。」
「うん!」
こうして僕は、彼女の気配を追ってひたすら走っている。
「はぁっ、はぁ、体力、しっかり、つけとくんだった・・・・」
ただでさえ、運動が苦手なのに走り続けるなんて無理に決まっていた。息は五分も立たず上がり、度々立ち止まっている。
『白君・・・。はぁ、公園着いた。でも、椿さんいる様子ないよっ・・・』
『少しだけ滞在していたみたいです。その後しばらく、・・移動し続けていたみたいです・・・。』
『分かった!っどっち方向?』
『そこの道を右です!』
『分かった!」
僕は再び走り出した。今は、疲労より、僕の体力より大事なことがある。
『福寿さん、補足情報です。』
「っはぁ、何?!」
『桜和椿は家出をしたようで、両親と進路について揉めたことが原因のようです。』
「進路・・・」
『調べた通りです。今この瞬間もどんどん気配が薄くなっている。早く見つけましょう。』
『うん!』
『そこをの角を左です』
『うん!』
僕は脚を速めた。
時刻は九時。私は今急足で心助さんのお店に向かっている。昨日、桜和さんに電話をした後もメッセージを送ってみたが既読がつく事はなく、私は返信を待っている間に寝落ちした。
今朝も何度か電話とメッセージを送ってはみたものの、昨夜送ったメッセージ同様返信どころか既読すら付かなかった。嫌な予感がしてしょうがないんだ。どうしようもなくてこの事を心助さんたちに相談しようとお店に向かって走っていた。三人寄らばなんとやらだ。
目の前の角を左に曲がり、お店が見えた時その前に人の姿があった。
誰・・・?
お店の前にいた人は少し小柄な男性で、幼い顔をしていたがおそらく大学生くらいではないだろうか。
その人はお店前をうろうろしていて明らかに挙動不審だった。見るに入りたいけど、入れないといった様子で焦っているようでもあった。お店で何かあったのかと彼の後ろからお店の中を覗くけど特に入りづらい何かがあるわけでは無かった。
「どうしよう。どうしよう・・。でも、早くしないと、・・・」
彼はずっと独り言を呟いていて、走っていたのか汗だくで顔色は良くない。とりあえず、中に入ろうと目の前の男性に声を掛ける。
「あの、大丈夫ですか?中に入った方がいいんじゃ・・・」
声を掛けると目の前の男性は肩を驚かせて振り向いた。
「え?!あ、すみませ・・・。あ・・・」
「え?」
あ?_____________________________________________
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