〜桜和 椿(41)〜
「んん〜、はぁ・・・」
よく寝られた。野宿より布団だな。文明って素晴らしい。当たり前に思っていたものが大切にしなければいけないと思い知る。
「起きたか」
「えっ?」
私が寝ていた部屋に背の高い見た事のない男の人が入ってきた。
「体調は?」
「・・・あっ、大丈夫です・・・」
「そう。じゃあ店の方に来てくれる?オーナーが待ってる。」
「え?あの、あなたは?」
「ここのバイト。」
ここのバイトの人だと言う彼は仏頂面で端的な会話を終えた後、部屋を出ていく。私は慌ててその後を着いて行った。
ここので働いているバイトの人は真奈さんと確か、・・・や、や_____________
「オーナー。呼んできました」
「あぁ!ありがとうね。
そうだ・・・。柳さん。この人が・・・・。
「桜和さん。よく寝れたかい?」
「はい。寝れました。ありがとうございます」
「それなら良かった」
心助さんは私の顔を見るとほっとしたように笑顔になった。心配してくれていたんだな。本当にいい人だ。
「オムライスを作ったんだけど、食べれるかい?」
「いや、お金が無いので」
「お金はいいよ」
「いや、そんな訳には・・・」
「いつもご贔屓にして貰っているからね。これくらいさせて!」
「・・・ありがとうございます」
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした!」
「本当に何から何までありがとうございます」
「いいよ。美味しかったかい?」
「はい。とても」
「・・・・」
「・・・・」
会話が止まり店には沈黙が流れた。ここまでして貰った以上、何も言わずありがとうございました。さようなら。と言う訳にはいかない。それはあまりにも失礼だ。かと言って口は私あまりに重く、すぐに開いてはくれない。
「で?何があったの?」
「えっ・・・」
私も、心助さんもどう切り出すべきかと空気を読み合っていると、柳さんが唐突に切り出した。思わぬ方向からの質問に私は一瞬呆気に取られた。
「柳君・・・」
「それが聞きたくてオーナーだってこの子をここで休ませたんじゃ無いんですか?」
「それは・・・そうだけど・・」
「君が、どうしてここで休む事になったか、大体オーナーに聞いた。オーナーはそんなつもりはないだろうけど、手助けして貰った以上何があったのかぐらいは話すべきじゃないかと思う。オーナーは君を心配して、力になりたいと思って君に休むことを提案したんだろうから。」
「柳君。いいよ。聞き出したくて休むことを提案した訳じゃないから」
「いえ。話します」
最もな話だ。柳さんの言ったことは。無愛想に見えるが、きっかけを作ってくれた柳さんにも感謝だ。
「桜和さん。無理に話さなくて良いんだよ?」
「無理ではないです。しっかりケジメをつけるためです。それに、貰ってばかりではいられないので」
重く閉ざした口をこじ開けるように私は声を吐き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます