〜桜和 椿 (11)〜
私は今、学校の図書室で薬立さんと一緒に自習をしている。教室ほど人がいないから、この前のような居心地の悪さはないが、それでもたまにこちらを伺う視線を感じることがある。
夏を体現したような空が、窓からこちらを覗いている。そんな空とは対照的に今の私の顔は、曇り空で覆われたような暗い顔をしていることだろう。
「・ぅ・さん。・うわさん!桜和さん!」
私は考え事をしていて、薬立さんの呼び掛けに気づかなかった。
「!。ごめん。どうかした?」
「いや。桜和さんが上の空だったから大丈夫かなって・・・」
「そっか。ごめんね。ちょっと考え事してた」
「もしかしてこの間のことをまだ気にしているの?」
「いやぁ。まぁ、ちょっと?・・・」
薬立さんは私の歯切れの悪い答えに少し考えるような顔をした後、こんな提案をされた。
「そうだ!今度どこかにお出掛けしない?」
「お出掛け?」
「うん!せっかく友達になったし、来年は受験があるし、なかなか行く時間はないだろうから今の内に遊びに行かない?勉強の息抜きにさ」
「いいね。行こう」
「本当?!じゃあ何をするか決めよう」
「うん」
最近モヤモヤして、考え事することが増えた。そんな私に気を遣って、薬立さんは遊びに誘ってくれたのだろう。どこに行こうかと楽しそうに予定を立てる彼女の気遣いに今回は甘えさせて貰おうと薬立さんとお出掛けの予定を立てるのだった。
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