~桜和 椿 (3)~
「はぁ・・・」
「そんなに溜息ついてどうしました。」
溜息もつきたくなる。彼女と会話もまともに出来ずに帰ってくることになったんだから。
「やっぱり、僕には無理だよ・・・」
「まだそんなこと言ってるんですか。貴方は本当に往生際が悪いですね。」
「そうは言うけど白君。いきなり知らない人の話を聞いてくれるわけも、話してくれるわけもないでしょ。どうやれって言うのさ・・・。不審者扱いされるだけだよ・・・」
「自然と話してくれる様に貴方が話しかけるしかないでしょう。」
「それ実質無策と変わんないよ・・。僕にそんなトークスキルがあるわけないでしょ」
僕に人の懐に自然と入っていけるようなトークスキルも雰囲気もない。さらに、相手は全く知らない他人ときたら、僕にとってはレベル1でいきなりゲームのラスボスと対峙するような心地なのだ。
ていうかそんなものがあれば、生前の人生でいくらか楽だっただろう。そう、そんな能力があればきっと・・・
「とにかく、もう一度接触を計ってください。」
白君の声が、ネガティブで沈んだ僕の思考を呼び戻す。
「そんな無茶な・・。それにあの子本当に不安定なんですか?ビシッと物を言う感じで自分で解決しそうな子だったけど・・・」
「それを聞くのが貴方の役目です。彼女の魂が不安定なのは確かです。それには何かしらの理由があるはずなんです。」
「だとしても、次になんて声を掛ければいいのか分からないよ・・・」
「そこはなんとかして下さい。出来る限りのサポートはしますから。」
「はあ~・・」体の中の憂鬱を吐き出すように溜息がこぼれた。
「じゃあせめて、彼女について教えてよ」
「分かりました。情報はそんなに多くはありませんが。彼女の名前は
「なんか、会った時の印象そのままだな。」
「彼女の情報はまだまだ無いので、これからまた情報集めてみます。分かり次第連絡するのでとりあえずもう一度彼女と接触をしてみて下さい。」
「・・・分かったよ・・。」憂鬱すぎて頭を抱えるが、どうやらやるしかないようだ。僕は今日三度目の溜息をついた。
そして彼女について考える。とても何かに悩んでいるようには思えなかった。初対面の僕に対しても
(あれ・・?)
そこまで振り返ってある違和感が僕の胸の中に浮き上がる。
(なんだろ・・・)
もう一度彼女について振り返る。
とてもはっきりとした性格で、思った事をズバッと言う子で、ナンパ男にも臆しない強さがあって、あの辺では一番頭が良い高校で、少し怖いと感じるが凛とした整った顔に、一匹狼の雰囲気、一つに結った黒髪が背中に伸びていた、・・・・
そこまで振り返って僕は違和感の正体にたどり着いた。
「あの子、不良っぽくないな・・・・」_______________
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